第54話 1.5.2 藍那との交際⑥
私、佐倉藍那は光覇兄との思い出を振り返っていた。
あれは七夕デートをしたときの話だ。
今日、私は光覇兄とプラネタリウムに行く。
時期的に7月7日なので七夕デートだ。
このデートがなぜ決行されたのかというと瑠夏ちゃんによる私へのマウントだった。
最近、瑠夏ちゃんはいつもニコニコしていて私はそれを不審に思っていた。
「瑠夏ちゃんどうしたの? そんなに嬉しそうに鼻歌まで歌って……?」
「えへへー、実は最近、コウ君とデートしたんだー。それも1回だけじゃないよ、4回だよ4回!!」
「なっ……!?」
私は衝撃の事実に開いた口が閉じなかった。
瑠夏ちゃんが光覇兄とデート……!?
しかも4回!?
「コウ君とのイチャイチャデート楽しかったなー。最後にはコウ君と……ね」
最後に一体何をしたの!?
もしかして……これはもしもの話だけど2人は大人の階段を上ったこともありうるってこと?
4回もデートしたらそんな気分になることもあるだろう。
そんな最悪のシーン光覇兄と瑠夏ちゃんのベッドシーンを想像してしまう。
2人はもう付き合って3ヶ月なのだ。
そろそろすることしててもおかしくはないだろう。
私は瑠夏ちゃんに問いただす。
「最後に何をしたの!? 瑠夏ちゃん!?」
「えへへー、ヒミツ」
「そんな……瑠夏ちゃん私より先に大人になったの……? そんな嘘よ……」
「あー、あくまでキスだからエッチなことはしてないぞ」
その光覇兄の言葉に私はほっとする。
でも……キスしたんだ。
私まだ光覇兄とキスしてないんだけど!?
2人がキスするシーンを想像してしまう。
いけない、今日の私はネガティブだ。
それで私は決意する。
「……決めた。私も光覇兄とデートする」
「ふっふっふ、私は別にいいよ。これが正妻としての余裕ってやつかな」
得意顔の瑠夏ちゃんが癪に障った。
「私も光覇兄とイチャイチャデートする!! 瑠夏ちゃんには絶対負けないんだから!!」
駅前で待ち合わせだった。
なぜ隣に住んでるのに待ち合わせにしたのかというと一緒に家を出たらデートの雰囲気が出ないと思ったからだ。
今日はお気に入りの白のワンピースを着ていた。
光覇兄は瑠夏ちゃんみたいな地雷系の服装より清純派な服装が好きだということは調査済みだ。
瑠夏ちゃんにつけられた距離を服装という点から縮めよう追い越そうと必死に考えた結果が白のワンピースだった。
光覇兄喜んでくれるかな?
緊張でドキドキだった。
日曜日だということで駅前は人で一杯だった。
その中で私は光覇兄を見つけた。
Tシャツにジーンズというラフな格好だった。
こんなラフな格好でも決まってしまうのは光覇兄がスマートなイケメンだからだろう。
やっぱり今日の光覇兄もカッコいいな……。
私は改めて何回目か数えてないけど光覇兄のことが好きだな、そう思った。
「お待たせっ光覇兄!!」
「俺も今、来たところだ、藍那」
「ねっ、今日の私どう? ちゃんとかわいく着こなせてるかな?」
「ああ、ワンピース可愛いよ、似合ってる」
光覇兄の可愛いという言葉に私は嬉しくなる。
「あっもしかして光覇兄照れてる?少し顔が赤いけど。」
「べ、別に照れてねーよ。ただ……」
「ただ?」
「ただ藍那が可愛すぎて目を合わせられなかった、ただそれだけだ」
可愛すぎる!?
なにそれ、嬉しすぎる!!
私は有頂天だった。
「ありがとう、今日の光覇兄もカッコいいよ!!
どこに出しても恥ずかしくないよ!!」
その後、私たちはプラネタリウムのある科学博物館までバスで向かった。
私たちはさっそくプラネタリウムに入った。
今日は七夕ということで織姫と彦星の話をしていた。
「ねぇ光覇兄、結構暗いね。」
「ああ、そうだな」
「私、ちょっと怖くなっちゃった。……手繋いでくれないかな?」
「ああ、いいぞ」
それで私たちはプラネタリウムにいる間ずっと手を繋いでいた。
ただ手を握っていたのではなくなんと恋人繋ぎだった。
光覇兄のことを近くに感じてドキドキしっぱなしで私は終始心臓がバックバックだった。
これ大丈夫? 手汗出てるのバレてない?
光覇兄の手はとても温かく安心感を覚えた。
緊張のせいか七夕伝説の話は頭に入ってこなかった。
それで緊張のプラネタリウムは終わった。
「面白かったねー、プラネタリウム」
私は話半分しか理解できてなかったけど。
「でも俺が彦星だったら毎日天の川泳いで織姫に会いに行くけどな。天帝に見つからないようにコッソリと」
私は光覇兄の話におかしくなって笑ってしまった。
いや、毎日泳いで会いに行くって。
彦星は遠泳の選手かっての。
「あはは、なにそれーウケる。でも光覇兄っぽい。それだけ私たちのこと好きってことだよね」
「ああ、そうだな」
その後、私たちは短冊に願い事を書いて笹に飾った。
「光覇兄は何てお願いしたのー?私は光覇兄とずっと一緒にいられますようにって書いたよ」
私は本心から光覇兄とずっと一緒にいられるように願っていた。
私たちはあまりにも離れすぎていたのだ。
再会したときお互いの顔が分からないくらい成長していた。
瑠夏ちゃんはずっと隣にいたんだよね。
瑠夏ちゃんのことが羨ましい本当にそう思った。
私には想像もできないくらい2人だけの思い出があるのだろう。
「みんな無病息災でいられますようにって書いた」
「へー、光覇兄、優しいね。……本当は私は1番目の彼女になりたいって書こうかなって思ったんだ。でもそれだと私、ワガママすぎだよね。光覇兄には瑠夏ちゃんがいて2番目の彼女になれるだけでも喜ばなくちゃいけないんだから」
私は瑠夏ちゃんのことを考えると複雑な気持ちになる。
幼なじみなので再会できて嬉しい、それは本心だ。
でも光覇兄と離ればなれになった私と違ってずっと光覇兄の隣にいた瑠夏ちゃん。
私より先に光覇兄に想いを伝えて恋人になった瑠夏ちゃん。
彼女に嫉妬心を抱かなかったかと問われると嘘になる。
現実問題、2番目の彼女という立場は脆く薄氷の上にあるような関係だ。
明日にでも瑠夏ちゃんが嫌だと言ったら私はフラれて別れることになるだろう。
それは嫌だ。絶対に。
だから二股を許してくれた瑠夏ちゃんには感謝しなくちゃならない。
光覇兄はいつか1人を選んで結婚するだろう。
そのとき選ばれるのは2番目の彼女である私ではなく1番目の彼女瑠夏ちゃんの方が可能性は高いだろう。
そのことを考えると今というモラトリアムがずっと続けばいいのになって思ってしまうのだった。
「だから最後の私のワガママなんだけど、光覇兄聞いてくれる?」
「ああ、なんだ?」
「私とキスしてくれないかな?」
私は自然とそう言うことができた。
今は将来のことを考えるのは一旦止めよう。
今は光覇兄とのファーストキスに集中しよう、そう思った。
「えっ……ああ……俺は全然いいけど」
そして目をつぶる私。
そして光覇兄と私は軽く口付けを交わすのだった。
時間はほんの一瞬だったが永遠のように思われた。
光覇兄の唇はすごく柔らかった。
「えへへ……光覇兄との初めて……私たちのファーストキスだね」
そう言って微笑む私は少女ではなく大人の女性に変化したような気がした。
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