第52話 1.4.15 藍那との交際⑤
私は光覇兄との思い出を振り返っていた。
あれは異世界転移して光覇兄と再会したときの話だ。
私は見慣れない天井で目を覚ました。
異世界転移が成功したらしい。
「お目覚めになられましたか?お嬢様」
メイドさんが話しかけてきた。
メイドと言ってもよくあるメイド喫茶のメイドではなくロングスカートの正式な方である。
「お嬢様、洗面所でお顔を洗いませんか」
「うん。分かった」
そこで鏡を見た。
そこには十代のまだ幼さの残る美少女がいた。
アイナ・フォン・ヴァレンタイン。
ヴァレンタイン侯爵家の令嬢でシュタットフェルト精霊学園で生徒会副会長を務めている。
金髪碧眼の見た目をしておりその凛としたたたずまいから親衛隊というファンクラブもある美少女である。
アイナの記憶から自分がシュタットフェルト精霊学園に通う学生だということが分かった。
つまりコウハ兄と同じ学校なのだ。
それだけで嬉しくなって有頂天だった。
アストレア様に転移したらめちゃくちゃ離れてましたってこともありうると言われていたのでコウハ兄とは都市いや国いや大陸が違うことも覚悟していた。
だが同じ国である皇国同じ都市である東都に転移できたのは奇跡だと思う。
この奇跡を神様に感謝した。
これは運命だ。
運命の赤い糸が私たちを引き合わせてくれたに違いない。
朝食を食べ終え教科書などの学校の準備をしていたときだった。
コンコン。
ドアがノックされる。
「お嬢様、親衛隊のみなさんが到着しました」
親衛隊。
私のファンクラブである。
その凜としたたたずまいから女子から人気であり親衛隊のメンバーは全員女子である。
アイナはノンケだが。
「おはようございます、アイナ様」
「おはよう、エレナ」
エレナ・フォン・カレアス。
親衛隊No.1である。
カレアス伯爵家の令嬢である。
金髪でツインテールをしている。
生徒会書記を務めており一言で言うと真面目である。
「おはようございます、アイナ様!!」
「おはよう、リンウェル」
リンウェル・フォン・セブンフォード。
親衛隊No.2である。
セブンフォード男爵家の令嬢である。
金髪でショートカットをしている。
元気が取り柄な親衛隊のお調子者である。
「おはようございます、アイナ様」
「おはよう、シェルビィ」
シェルビィ・フォン・リーチェル。
親衛隊No.3である。
リーチェル子爵家の令嬢である。
金髪でセミロングをしている。
おっとりした性格で親衛隊の天然、マイペース担当である。
「リンウェル、ネクタイが曲がってますよ」
私はリンウェルのネクタイを直してあげた。
「わわ、すみません。朝、寝坊して急いでたもので……」
「こら、リンウェル。アイナ様の手を煩わせるんじゃありません」
「むー。リンウェルちゃんだけずるいです。……そうだ、私のネクタイも直してください」
「いや、シェルビィ? 今、自分で崩したでしょ」
「てへ、バレましたか」
そんなこんな雑談をしながら登校した。
昼休み。
私は困っていた。
コウハ兄が隣のクラスだということが分かったのでさっそく向かおうとした。
だが親衛隊のエレナ、リンウェル、シェルビィが解放してくれないのだ。
どこに行ってもついてくるし、コウハ兄のところに行きたいと私は1度言ったのだがあんな女たらしのところにアイナ様を向かわせるわけにはいきませんと言って他の親衛隊メンバーを使って絶対にコウハ兄のところに向かわないようガードを固めたのだった。
そこで私は時間を停止する能力を使うことにした。
トイレに行くと親衛隊に言って(さすがにトイレまでは付いてこなかった。)時間を停止する能力を発動した。
ほ、本当に停まってる。
私はこの能力を使うまでは半信半疑だった。
それで私は意気揚々とコウハ兄のいるクラスに親衛隊の監視の目をかいくぐって向かう。
コウハ兄のいるクラスの前で時間を停止する能力を解除する。
「コウハ・スカイマーク君はいるかしら」
「俺だけど。ヴァレンタインさん、俺に何か用……?」
コウハ兄は異世界でもイケメンだった。
やっと……やっと会えた。
コウハ兄のことが大好きって気持ちが爆発して私はコウハ兄に抱きついた。
「光覇兄!!」
「その呼び方、藍那か!?」
「うん、そうだよ。嬉しい、また会えたね光覇兄」
コウハ兄は大層驚いてるようだった。
その姿が可愛らしかった。
教室のギャラリーが騒ぎ出す。
キャーキャーうるさかった。
「スカイマーク君とヴァレンタインさんいつの間に恋仲になったのかしら?」
「あ、でも上条さんも結城さんもおられるのに……はっ!! もしかして四角関係!?」
「なにそれ、激アツ展開ですわ!!」
「はいはーい、2人とも離れてー」
そのとき愛し合っている私たちに邪魔が入った。
このお邪魔虫は既視感がある……。
「む、この感じは瑠夏ちゃん?」
「そうだよ。こっちの世界では上条瑠夏って言うんだ」
「瑠夏ちゃんこっちの世界でもよろしくね」
「ああ、うん、よろしく」
私たちは2人とも笑顔だった。
だが視線がバチバチと飛ばし合っており水面下で戦いが繰り広げられてることは明らかだった。
「2人とも!! 兄貴がいるんだから仲良くしましょうよ!! ねっ!!」
「心海ちゃんが言うならここは矛を下げよう」
「あっ私、凪波です。異世界では結城心海って言います」
「心海ちゃん、よろしくー」
「はい、よろしくお願いします」
「……本題なんだけど私をコウハ兄のいる班に入れてくれないかな?」
「ちょっとお待ちください!!」
エレナだった。
私がいなくなって5分しか経っていないのにもう気づいたのか、さすが親衛隊No.1。
「何をお考えですか!? アイナ様!? こんな平民と同じ班に入るとは!? あと女たらしと噂のコウハ・スカイマークではないですか!?」
エレナのこの発言にむっとする。
「差別は良くないですよー、エレナ。あと、コウハ兄のことを悪く言うのであれば私とて許しませんからね」
コウハ兄を軟弱な女たらしと断言する悪口に私は毅然と対応する。
「私たちの班はアイナ様がいなければ崩壊してしまいます!!」
「前々から親衛隊のみなさんが仲が悪いことが気になってたんですよねー。この機会にみなさんには仲良くなってもらいましょう」
「せめて……せめて私1人だけでもご同行させてください。アイナ様が心配なんです」
「もう、しょうがないですね。でもコウハ兄に一言謝ってください。そうじゃなきゃ同行を認めませんからね」
私はエレナが同行する条件にコウハ兄への謝罪を要求する。
プライドの高いエレナのことだ。
コウハ兄への謝罪は屈辱だろう。
「分かりました。スカイマークさん、さっきはごめんなさい。どうか私をあなたの班に入れてください」
「ああ、俺はいいですよ。2人を歓迎します」
「ありがとうございます」
コウハ兄はあっさりとエレナを許してしまった。
コウハ兄やっぱり優しいな、好き……。
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