第51話 1.4.14 藍那との交際④

 私、佐倉藍那は光覇兄との思い出を振り返っていた。


 あれは異世界転移したときの話だ。


「光覇兄、この女の子は誰?」


 瑠夏ちゃんは彼女だからいるのも分かる。


 凪波ちゃんも妹だからいるのも分かる。


 でもこの女の子だけなぜここにいるのか分からなかった。


「ああ、一姫だ。スマホの精霊だ」


「え? ……え? ……スマホの精霊?」


 スマホの精霊……。意味不明だった。


「藍那さんが戸惑うのも分かりますよ。私も最初聞いたとき戸惑いましたから。兄貴、ちゃんと説明してください」


「ああ、分かった。実は……」


 光覇兄は私に先日起こったことを話してくれた。


 コンビニから自宅に帰ったところ美少女がいたこと。


 その美少女はスマホの精霊だと言っていてどうやら本当らしいこと。


 一姫と名付けて同棲することになったこと。


 異世界転移することになったこと。


 コウハ・フォン・フレーデスヴェルクという皇子になったこと。


 皇帝家を追放され皇国でコウハ・スカイマークとなったこと。


 シュタットフェルト精霊学園に通うことになったこと。


「ど、どどど同棲!? 異世界!? 光覇兄と一姫さんも付き合ってるの?」


 私が1番聞きたかった光覇兄と一姫さんが付き合っているのかである。


 こんな美少女と同棲しているのである。


 光覇兄が手を出しててもおかしくはないだろう。


「いや、付き合ってない。精霊として契約してるだけだ」


「わわ、ご主人様とお付き合いだなんて畏れ多いです〜」


 その2人の言葉に私は一安心した。


 一姫さんと瑠夏ちゃん、そして私、つまり三股をしているのか不安だったのである。


 だがその疑惑は2人の言葉によって打ち消された。


 二股はしてるけど。


「ふーん。そうなんだ。でもこんな美少女と同棲だなんて光覇兄の貞操が心配だよ……。決めた。私も異世界に行く」


「わー、藍那さんも異世界に来てくださるなんて心強いです」


「いやいやいや、異世界転移しても離れた場所に転移する可能性もあるんだ。異世界は広いんだぞ」


「それでも私は行く。行って絶対光覇兄を見つけ出して異世界でイチャイチャするんだ」


「異世界には私がいるのも忘れないでね。私の方がコウ君とイチャイチャするんだから!!」


 私と瑠夏ちゃんがバチバチと火花を飛ばし合う。


 ☆


 私は夢を見ていた。


「ごきげんよう、私は女神アストレアだよ」


 美女が私の夢に出てきた。


「一姫ちゃんやコウハ君から話は聞いてるかな?」


「はい、本当に異世界に行けるんですか?」


「うん。君には『十三国戦記』に似せて作られた世界の登場人物になってもらうよ」


 十三国戦記。私も読んだことがある。


 十三国戦記とは帝国主義時代に十三国の列強が覇権を求めて戦うというラノベである。


 十三国戦記では精霊と契約して戦う精霊騎士が活躍し精霊騎士の数がその国の強さとほぼイコールとなっている。


「異世界転移について何か質問とか希望とかある?」


「コウハ兄のいる世界に確実に行けるんですか?あと、出来ればコウハ兄の近くに転移したいんですが」


「まず世界は確実にコウハ君のいる世界に行けるよ。私が管理している世界だからね。ただコウハ君の近くに転移できるかは分からないよ。転移したらめちゃくちゃ離れてましたってこともありうると思う。それでも異世界転移する覚悟はあるかな?」


「分かりました。行きます」


「おお、話が早いね。よくある異世界転生じゃなくて異世界転移だから安心してね。死ななくても大丈夫だよ。トラック転生とか経験しなくて良かったね。君が寝ている間に異世界に接続するようにするよ。ただ異世界で死んだら二度と異世界に行けなくなるからそこだけは注意してね。異世界転移の記念に1つだけチートスキルを与えよう」


「チートスキル?」


「そうチートスキル。何でもいいよ。未来を予知する能力とか瞬間移動とか絶対遵守の力とか何でもありだよ」


「時間を停止する能力でお願いします」


 時間を停止する能力が最強のスキルだと考えている私は即座にそう答える。


「時間を停止する能力かー。なかなか面白いスキルを選ぶね。いいよ。時間を停止できるように調整しておくよ。じゃあ行ってらっしゃい」


 そうして私は突然光に包まれた。


 あまりの眩しさに目を開けていられなかった。


 こうして私は異世界転移することになった。




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