第47話 1.4.10 瑠夏との交際⑦
私、水篠瑠夏はコウ君との思い出を振り返っていた。
あれはコウ君とアキバデートに行ったときの話だ。
私とコウ君はアニメイト、ゲーマーズ、メロンブックスをハシゴして少し疲れたのでメイド喫茶で休憩しようということになった。
「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様!!」
む、むむむー。
コウ君がメイドさんに見惚れて鼻の下を伸ばしていることが分かった。
私という彼女がいるのにだ。
「コウく〜ん? 私というかわいい彼女がいるのに何メイドさんに鼻の下伸ばしてるのかな?」
「なっ……。鼻の下なんて伸ばしてないぞ」
コウ君が動揺しているのが分かった。
あと嘘をついているのも一瞬で見抜いた。
コウ君は嘘をついてるときの癖で前髪をイジるという癖があるのだ。
今回も前髪をイジっていたのですぐ嘘だってことが分かった。
これは私たちが幼なじみという長い年月を過ごしてきたからこそ分かるものだった。
「もううちの彼氏は本当エッチなんだから」
「お嬢様ちょっといいですか?」
そのときメイドさんに話しかけられた。
「はい、何ですか?」
「今、メイドの体験会をしているのですがやっていきませんか?」
「やります」
私は即答した。
コウ君がメイドさんを大好物だということは周知の事実だった。
そのメイドさんに変身できる願ってもない状況だった。
私のメイド姿でコウ君をメロメロにさせるんだから。
それで私は別室で着替えた。
フリフリのメイド服(ミニスカート)にガーターベルトを慣れない手つきで着用した。
「こ……これで大丈夫ですかね?」
「とってもお似合いですよ。彼氏さんにも喜ばれると思います」
メイドさんにそう太鼓判をおされた私は楽しみ半分不安半分でコウ君にメイド姿を披露した。
「コウ君、少し恥ずかしいけどメイド服着てみたよ。どうかな、私、かわいい?」
「……」
コウ君からの返事はない。
見るとポカンと口を開けてフリーズしていた。
コウ君にはメイド姿は少し刺激が強すぎたのだろうか。
たっぷり5秒間はその状態だったろうか。
「コウ君? 聞いてる?おーい」
「……ハッ!! かわいい、超かわいいよ瑠夏」
コウ君のかわいいという言葉が胸に染みた。
頑張ってメイド服を着て良かった、そう思った。
「えへへ。本当?嬉しいよ」
「かわいすぎて言葉が出なかった。似合ってるよ瑠夏」
コウ君が言葉を失っていたのは私がかわいすぎたかららしい。
なにそれ、嬉しすぎる!!
コウ君のことをドキドキさせることができて良かった。
「えへへ、コウ君ありがとう。……コホン。ご注文はどうなさいますか、ご主人様?」
私はメイドモードになってコウ君のことをご主人様と呼ぶ。
一姫ちゃんがご主人様と呼んでいるのが少し羨ましかったのだ。
だからこれは念願のご主人様呼びだった。
コウ君もこういうメイドさんにご主人様と呼ばれるそんなベタなシチュエーションが好きだろうから(幼なじみだから分かる)少し恥ずかしいけど勇気を出してご主人様と呼んだ。
「カフェラテで頼む」
「承知しました、ご主人様」
そう言って私はウインクした。
コウ君を悩殺するためだ。
期待通りコウ君は動揺して顔を赤らめていた。
私はカフェラテを持ってきた。
「ご主人様、おいしくなるおまじないしますね」
「おまじない?」
「おいしくなーれ。おいしくなーれ。萌え萌えキュン♡」
正直に言うとすごく、すごく恥ずかしかった。
でもコウ君のためだ。
私は勇気を振り絞って恥ずかしそうにハートマークを作った。
メイド体験を終えた私たちはゲームセンターに向かった。
私たちは蒼海戦線というゲームをした。
「やったああ!! 高雄中破GETだー!!」
「おめでとう、コウ君」
私もプレイしているから分かるのだが高雄中破はかなりの大当たりでやっぱりコウ君は相当な幸運の持ち主なんだと思った。
次に私たちはホッケーゲームをした。
「コウ君、何か罰ゲームをしようよ」
「例えば?」
「負けた人は勝った人の命令を何でも1つ聞くってのはどうかな?」
私はこのデートでコウ君との関係を一歩前進させようと考えていた。
具体的にはディープキスだ。
それにこれはコウ君にとってもメリットがある。
命令を何でもというところからコウ君はきっとエロい妄想をしていることだろう。
ディープキス以上にエロいこと私と初体験することまで妄想してるんじゃないだろうか。
コウ君、そ、それは私たちには早すぎるよ……。
本当にうちの彼氏はエッチなんだから。
「よしっその罰ゲーム乗った!!」
結果としては10対8で私の勝ちだった。
「コウ君じゃあ命令を言うね。……私とキスして」
「瑠夏とのキスなら俺だって願ってもない状況だけど……本当にその命令でいいのか?」
「うん。私はコウ君とキスがしたい」
だがただのキスではない。ディープキスだ。
私は今さらながら緊張してきた。
そして私はコウ君とキスをする。
そして私の舌がコウ君の口に侵入した。
絡みあう舌と舌。
深い深いキスだった。
初めてだったけどとても気持ち良かった。
コウ君と心と身体を一つにしたような感覚がした。
「えへへ。初めてだよね、ディープキス……」
そう言った私はコウとの関係を一歩進められた満足感で大人の階段を一歩登ったような気がしていた。
その後、私たちは新宿に向かった。
コウ君がなにやら行きたい場所があるらしい。
新宿駅は人が一杯で離ればなれにならないように手を繋いでいた。
外はすっかり真っ暗でいつの間にかすっかり夜になったことが分かった。
「わあ、綺麗……」
コウ君に連れてこられた場所は高層ビルの展望台だった。
そこからは東京の夜景が一望できた。
東京の街並みはキラキラ光っていてまるで天空の星々が散りばめられたようだった。
「瑠夏、食事にしないか?」
「うん、そうだね。……でもここって三ツ星レストランなんじゃ……予約必須の」
「予約していた宮内です」
え! え? ええええ!? コウ君予約してたの!?
展望台から食事への流れスマートすぎるって。
私は改めてコウ君のことを惚れ直していた。
そのレストランはいわゆるビュッフェという形式だった。
夜景を一望できるとってもロマンチックな場所だった。
ビュッフェを食べ終わってデザートのバニラアイスを食べているときだった。
「今日、大事な話があるんだ」
「大事な話?」
コウ君はいつにもまして真剣な表情で凛々しかった。
その表情に私はドキッとする。
「俺は瑠夏のことが……好きだ。世界で一番好きだし一生大事にしていきたいと思ってる。受験が終わるのをずっと待っててくれたことや俺が藍那と付き合いたいと言って認めてくれたその優しさには感謝してもし足りないくらいだ。本当にありがとう。俺はいつも世界の中心で瑠夏のこと好きだって叫びたい気分なんだぜ。だから俺のこ、告白を聞いてください。……私はあなたを愛してます。結婚を前提としたお付き合いをしてください」
私はコウ君の告白に驚いていた。
それと同時にとても嬉しくなった。
こんなにもコウ君が私のことを想ってくれるこれを幸せと言わず、何を幸せと呼べばいいのだろうか。
だから私の答えは決まっていた。
「はい、喜んで」
私は飛びっきりの笑顔でそう答えた。
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