1.4.8 瑠夏(幼なじみ)との交際⑤

 私、水篠瑠夏はコウ君との思い出を振り返っていた。


 あれはコウ君と神社デートに行ったときの話だ。


 異世界。皇国首都東都。


 期末テストが一段落した私たちはデートをしようという話になった。


 コウ君からどこに行きたいか希望を聞かれた私は神社と答えた。


 私は現実世界でも神社・仏閣巡りが趣味で皇国の神社にも興味があった。


 私は小さい頃から地元の小さな神社に毎年、私の家族とコウ君の家族で初詣するのが習慣となっていた。


 私は小さいながらその神社の神秘さに心を奪われた。


 それから私は神社・仏閣の魅力の虜になりコウ君と一緒に全国の神社・仏閣を巡った。


 その中でもやはり京都がお気に入りで私にとって京都は第2の故郷と呼べるレベルだった。


「私、大社に行くの初めてなんだー。ドキドキしてきたよー」


 私たちは大社と呼ばれる神社に徒歩で向かっていた。


「俺、神社とかの礼儀作法全く知らないんだけど大丈夫かな?」


「大丈夫だよ。私が手取り足取り教えてあげるから!!」


 私はそう自信たっぷりに答えた。


「えへへ、つまり、今日は私が先生でコウ君が生徒ってことだよね?」


「ああ、そうだな」


「じゃあ、先生と生徒の一体一の個別指導、いけない個別指導始めるよ」


「いや、いけない個別指導ってなんだよ!!」


「やんっ……コウ君だ、駄目だよー。私たちは先生と生徒。そんな禁断の関係になるなんて……」


「いや、俺、何もしてないからな!? 瑠夏が1人で盛り上がってるだけだからな!?」


「むー、コウ君ノリ悪いなー。そこは『先生、俺もう抑えきれないんです。先生のことが好きなんです。俺の初めてをもらってください』でしょ」


「いやいや、そんなこと俺言わねーからな、絶対」


「え……? そこまで言わなくても……。私ってそんなに魅力ない?」


「いやいやいや、瑠夏は魅力しかないよ。こんなに可愛くて優しい、自分の好きなものには一直線、そんな瑠夏のことを俺は好きになったんだ。ただそういうことは段階を踏んで経験したいかなって……。俺は瑠夏のことが大事だからそういうことは雑に済ませたり雰囲気に流されたくないんだよ」


「コウ君……!! 嬉しい、嬉しいよ、そこまで私たちのことを考えてくれてたんだね。私も大好き」


 そう言って私はコウ君に抱きついた。


 それで私たちは大社に入った。


 参道の歩き方、手水、参拝の作法をコウ君に教えた。


 参拝のとき、コウ君は私よりも長くお祈りしていた。


「コウ君、コウ君、何をお願いしたの? 私はずっとコウ君の隣にいられますようにってお願いしたよ」


 言葉に出さなかったが私はそれ以外にコウ君とずっと好き同士でいて一生添い遂げられますように、コウ君が藍那ちゃんや他の女の子よりも私を優先して大事にしてくれますようにとお願いした。


 これだと欲張りのようだけど大社の神様大御神は寛大だから許してくれるでしょ、きっと。


「俺はダンジョン攻略できました。ありがとうございますって感謝を伝えたよ」


 なんとコウ君は神様にお願いではなく感謝を伝えたのだった。


 こんなところもコウ君の素敵な部分で私は本当にこの人のことを好きになって良かったと思うのだった。


「あー、一姫ちゃんが覚醒してインプレッション・シーカーっていうユニークスキルで活躍したんだよね。私も実際に見てみたかったな……。凄かったんだよね?」


 コウ君がダンジョンの最下層に落下したときはもう二度と会えなくなるんじゃないかって今生の別れになることを覚悟した。


 私はコウ君が死ぬなら後を追おうとダンジョンの最下層に向かおうとした。


 だけど心海ちゃんやシルファちゃん、アスハさんに必死に止められて私は生きながらえた。


 だからコウ君が無事に戻ったときは奇跡だと思った。


「ああ、一姫のインプレッション・シーカーはヤバかった」


「コウ君、コウ君、今度はお守り買っていこうよ」


「ああ、瑠夏は何のお守りにするんだ?」


「私は恋愛成就かな」


「恋愛成就ってもう叶ってるじゃないか……」


「ここの大社の恋愛成就のお守りには浮気防止も含まれてるんだよね。ウチの彼氏は天然の女たらしだからねー」


 そうコウ君は現実世界でも異世界でも女の子にモテるのだ。


 コウ君が整った顔立ちをしているイケメンであることや誰にでも優しくスマートに接するからだ。


 その部分はコウ君の美点でもあるんだけど心配の種でもあった。


 コウ君は誰でも彼でも優しすぎるのだ。


 その優しさに心奪われた女の子たちがコウ君に告白するところを何回も見た。


 私という彼女がいるのにだ。


 もし、私という彼女がいなかったら冗談抜きで100人は告白されるのではないだろうか。


「あはは……」


「アイナちゃんとの二股だって私、本当は本当は嫌だったんだからね。これ以上コウ君が浮気しないよう神様にお願いしないとね」


「いや……その……すまん」


「ちょっといいですかお2人さん」


 そのとき神社の巫女さんに話しかけられた。


「今、巫女の体験会をしているのですがやっていきませんか?女性限定ですが。」


「やります!!」


 私は即答した。


 私は巫女さんの仕事にとても興味を持っていた。


 だから飛びつかないはずがなかった。


 私は控え室で巫女姿に着替えた。


「これでいいですかね?私巫女姿になるのは初めてで少し自信がないのですが……」


「これで大丈夫ですよ。きっと彼氏さんにお喜び頂けますよ」


 巫女さんから太鼓判をおされた。


 それで自信のゲージが80%くらいになった私はコウ君の前に巫女姿を披露した。


「おお……」


 コウ君は私の巫女姿に言葉が出ないようだった。


 これは良い反応、それとも悪い反応、どっち!?


「どう? どう? コウ君?」


「ああ、似合ってる、可愛いよ、瑠夏」


「本当? やったああ!!」


 私は巫女姿をコウ君に可愛いと褒められたことにとても嬉しくなった。


 それで私は意気揚々と巫女の1日体験をした。


 夕方。


 巫女の1日体験を終えた私はコウ君と一緒にとある場所にいた。


「これが恋の石……!! ねえ、コウ君知ってる?」


「なんだ?」


「この恋の石の前でキスした2人は一生添い遂げることができるんだって。……ねえ、キスしようよ」


 私はコウ君の目を見つめてそう言った。


 私とコウ君はまるで引力に引かれるようにお互いの顔を近づけ軽く口づけをした。


「えへへ、これで一生一緒だね、コウ君」


 私は幸せで心が一杯だった。

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