第42話 1.4.5 千歳

 ウェストリア=フィーネ二重帝国。


 西方諸国の1つ。帝国主義国。音楽の都を持つ芸術国家。


 後に帝国、皇国、セルベスの三国同盟に加わり四国同盟になる。


 各地で民族紛争や分離運動が起こっており各地で火種がくすぶっている。


 ☆


 異世界。皇国首都東都。


 今日、俺、心海、心海の精霊千歳はドーナツ屋に来ていた。


 千歳ちとせ


 心海の精霊。風属性の精霊だ。


 桃色の髪と瞳をしており髪型はセミロングだ。


 聖剣はアイアンシールドとフレイシアだ。


 アイアンシールドはその名の通り大きな盾で俺のパーティでは千歳は最前線のタンクを担当している。


 フレイシアは量産剣で片手剣だ。


 ウインドブラストというスキルも使える。


 なぜ俺たちがドーナツ屋に来ているのかというと千歳に誘われたからである。


「兄様、心海様、今日ドーナツ屋に行きませんか? 今日、食べ放題がやってるんですよ!!」


 ワクワクした顔でウズウズした表情で千歳が誘ってきた。


 千歳は健啖家けんたんかで特にドーナツは大好物なのだ。


 ちなみに千歳はご主人様である心海が俺のことを兄貴と呼んでいるのでそれを見習って俺のことを兄様と呼んでいる。


 妹がもう1人増えたみたいで俺は嬉しかった。


「ドーナツ屋か。最近行ってないから行ってもいいかな」


「私も食べ放題に興味あるかも」


「やったああ、じゃあ3人で行きましょう!!」


 そうして俺たちはドーナツ屋に来た。


 その店は現実世界のミスドのようなチェーン店で色どり彩やかな様々なドーナツが売っていた。


 ドーナツの源流はユーラントにあり、小麦粉、砂糖、卵で作った生地を発酵させ油で揚げたお菓子がルーツだと言われている。


 それが合衆国に渡り、ドーナツとして広まっていった。


 近年、皇国に帝国経由で伝わり皇国では大流行している。


 俺はフランクフルトパイ、フレンチクルーラー、ドーナツポップ、ゴールデンチョコレート、ミートパイを選んだ。


 フランクフルトパイはソーセージが入ったフランクフルトのようなパイだ。


 フレンチクルーラーは砂糖がまぶしてあり軽い食感が特徴だ。


 ドーナツポップはミニサイズのドーナツでいろいろな種類のドーナツを手軽に楽しめる。


 ゴールデンチョコレートはチョコレートで塗られた生地に金色の甘い粉末がまぶしてある。


 ミートパイはその名の通りミートパイでザクザクッとした食感が楽しい。


 心海も5個のドーナツを選んでいた。


 千歳は驚いたことに20個ものドーナツを選んでおりこの店のドーナツをコンプリートしようとしていた。


「食べ放題だとついつい取っちゃうんですよね。これだけ選んでも1000ティーゼ!!安すぎますよね」


「改めて見ても千歳の大食いっぷりには驚かされるな。その細い体にどうやって入るんだ……」


「兄貴、このストロベリーフレンチクルーラーおいしいよ。1口食べる?」


「本当か?ありがとう」


「はい、アーン」


 なんと妹からのはい、アーンだった。


 少し気恥ずかしかった。


 これは兄妹のスキンシップ、単なるスキンシップだから。


 シスコンの俺にとっては望外の幸せだった。


「兄様、私も私も。はい、アーン」


 千歳からのはい、アーンに応える。


「えへへ、兄貴と間接キス……」


「えへへ、兄様と間接キス……」


 言われてみれば確かに間接キスだった。


 妹たちとの間接キスさらに気恥ずかしくなった。


 俺たちはその後、ドーナツを完食した。


「ふー、食べた食べた。食後の運動をしたい気分だよ」


「それなら詩音ちゃんと模擬戦してくれないか?」


「模擬戦? 全然大丈夫だよ」


 こうして千歳と詩音ちゃんの模擬戦が始まった。


「ヤァァァッー!!」


「タァァァッー!!」


 幾度も剣戟が交わされる。


 詩音ちゃんによる機槍による猛攻を千歳は盾で防ぎ片手剣で応戦する。


 詩音ちゃんは千歳の高い防御力に攻めあぐねているようだ。


「千歳、盾スキル!!」


「了解、盾スキル!!」


 千歳が盾スキルを発動する。


 これは一定範囲内に防御フィールドを発生させ物理魔法攻撃を無効化させるスキルだ。


 これで詩音ちゃんは決定打が打てなくなった。


 結局、この戦いは引き分けになった。


「詩音ちゃん、お疲れ様」


「ありがとう、コウハ君。千歳ちゃん堅すぎるって。味方だからいいけど敵にしたら厄介だね」


「一姫、インプレッション・シーカー使えるか?」


 この模擬戦には一姫も見学していた。


「うん、使えるよ」


「心海と千歳に見せたいものがある。一姫のインプレッション・シーカーだ!!」


「あー、あの噂のチートスキル?」


「へー、1度見てみたいと思ってたんですよ」


「一姫、インプレッション・シーカー、盾スキル!!」


「了解。インプレッション・シーカー……盾スキル!!」


 そして一姫は千歳が発動した盾スキルの防御フィールドをそっくりそのまま発動した。


「ええええ!?」


「私の盾スキルがこうも簡単に真似された!?」


「このようにインプレッション・シーカーは対象のスキルを高速で検索、高速で学習し、スキル模倣するんだ!!」


「兄貴、驚天動地のユニークスキルですね……。おめでとうございます!!」


 その後、千歳のウインドブラストをインプレッション・シーカーで解析、模倣した。

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