第32話 1.3.6 長谷川凛の異世界転移

 俺は公募に出す作品で悩んでいた。


 次の展開が思いつかなかったのだ。


 俺は風呂に入ってるとき天啓が降りた。


「許嫁だ!!」


 そう主人公とヒロインを許嫁にすればいいのだ。


 カチッとパズルのピースが合わさったような感じがした。


 主人公が両親に呼ばれて許嫁を紹介される、それがなんとヒロインだったというストーリーになった。


 これなら読者の興味関心を惹けるだろう。


 俺は風呂から上がるとそのままの勢いで執筆した。


 2万字まで書いた。


 公募は10万字書かなければいけないからあと8万字である。


 ☆


「その·····あの·····俺を先生の弟子にしてくれませんか!?」


 俺はそう告白した。


「弟子?·····ふふ、そんなことを言うのは君で2人目だよ」


「俺はラノベに昔から慣れ親しんでました。特に長谷川先生のキミキセを始めとした作品は大好きで何度も読ませてもらっていました。今年から自分でもラノベを書いてみたいと思いWEBに投稿したり公募に向けて書き始めたりしてます。俺も長谷川先生みたいな面白いラノベを書いてみたいんです。どうか俺を先生の弟子にしてください!!」


「ふふ、嬉しい」


「じゃあ、それって·····!?」


「ああ、君を弟子にしてもいいよ」


「マジですか!?」


「ただ条件があるよ」


「条件?」


「私を異世界に連れてってほしい」


「ええええ!?」


「異世界だなんてそんなラノベ的な展開、ラノベ作家として見逃せないよね。私も実際に異世界を体験して自分の作品をブラッシュアップしたいんだ」


 長谷川先生は好奇心が強く非常に向上心が高いようだった。


 これだけキミキセという大ヒット作を何本も書いてるのにさらに上を目指そうとする、その向上心は見習わなければならない、そう思った。


「分かりました。アストレア様に頼んでみます」


「それともう1つ師弟関係になるなら下の名前で呼ばない?」


「名前呼びですか。」


「じゃあ、行くよ、航覇君」


「よろしくお願いします、凛先生」


 ☆


 異世界。シュタットフェルト精霊学園。朝のSHR。


「今日はみなさんにお知らせがあります」


 担任のリゼ先生がそう言う。


「このクラスの副担任の先生が産休のためいなくなるので新しい先生が本日付けで来てくれました。みんなー、拍手、拍手」


 パチパチパチ。


「はじめまして。私はリン・フラウです。新人ですが精一杯頑張ります」


「フラウ先生まず初仕事に出席をとってください」


「分かりました」


 そしてクラスメイト達が順に名前を呼ばれる。


「コウハ・スカイマーク君·····。コウハ・スカイマークって航覇君!?」


「えっはい、俺はコウハですけど」


「後で進路指導があるので職員室に来てください」


 俺はその後、職員室に入ってリン・フラウ先生に会った。


「よく来たね、航覇君」


「はい、で、進路指導というのは·····?」


「ああ、それは嘘。君を呼び出すための口実だね」


「えっ!?」


「まだ分からないかな、私だよ私、長谷川凛」


「ええええ!? 凛先生!?」


「なぜか教師になっていたんだけど航覇君にまた会えて良かったよ」


「こちらこそ会えて光栄です。異世界でもよろしくお願いします」


 なんと副担任のリン・フラウ先生は長谷川凛先生だったのである。


 また奇跡が起きた。


 知り合いが俺の身近なところに異世界転移してきたのである。

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