1.3.5 長谷川凛

 俺は小説投稿サイト『シトラス』で自主企画なるものをしていた。


 自主企画とはその名の通りユーザー自身が行う企画のことで自由に企画を開催して『シトラス』を盛り上げることができる。


 俺はラブコメの自信作、求むという自主企画を主催した。


 この自主企画は読み合いノルマなし、あなたのラブコメの自信作を置いてくださいと紹介文に書いた。


 驚いたことにこの自主企画には最終的に100人も参加してくれた。


 俺は主催者なので全ての作品を3話目まで読むことにした。


 応援コメントも残すことにした。


 VTuberものと『コンビニで傘を間違えた』はとても面白くほくほくの体でこの自主企画に満足した。


 あ、一応自分のラブコメ作品2作もこの自主企画に参加していた。


 PVも70ほど増えた。


 ☆


 とある休日の昼下がり。


「詩音ちゃん、神様に会ってみない?」


「え·····? 神様·····? どういうことかな、光覇君?」


「キミキセの原作者長谷川凛先生に会ってみない?」


「ええええ!? そんなことができるの!?」


「うん。長谷川先生とはXでFFでときどきリプでやり取りするんだ。長谷川先生の作品の感想ポストをすると毎回いいねしてくれるんだ。だから割と仲が良い自信があるよ」


「会ってみたい·····会ってみたいよ。私の創作者と」


「了解。じゃあ連絡するね」


 それで俺は長谷川先生にDMした。


『こんにちは。長谷川先生。DM失礼します。』


『おー、緋坂航覇ひさかこうは君か。何の用だい?』


 長谷川先生からは秒で返信が来た。


 長谷川先生はツイ廃なのだ。


 リプをすれば秒で返信が来るし、フォロワーも20万人いる。


 ちなみに俺のペンネームは緋坂航覇である。


 緋坂は何となくカッコいいから航覇は本名の光覇からつけた。


『ちょっと会ってほしい人がいるんですが』


『会ってほしい人?』


『はい、会うと驚くと思いますよ!!』


『分かった。君のお願いだったら聞こうじゃないか』


『次の休日、東京タワーでどうですか?』


『ああ、大丈夫だよ』


「長谷川先生会ってくれるってさ」


「本当!? 楽しみ!!」


 ☆


 1週間後。


 俺と詩音ちゃんは東京に向かう新快速に乗っていた。


 キミキセは現実世界が舞台なので電車に乗るのにも慣れていた。


 一姫と初めて電車に乗ったときは大変だった。


 一姫は興奮しまるで幼稚園児のようにはしゃいでいた。


「ご主人様、ご主人様!! 景色がビュンビュンしてるよー」


「一姫あんまりはしゃぐなって」


 こんな感じである。


「詩音ちゃん、もしかして緊張してる?」


「あはは、うん、かなりね」


「初めて創作者と会うんだもんねー。俺もオフで長谷川先生と会うの初めてだから緊張してきた」


 それで俺たちは東京タワーに着いた。


 長谷川先生は青い服を着ているらしい。


 青い服、青い服、この人かな。


「すみません。長谷川先生ですか?」


「はい、そうですよ。緋坂君かな?」


 長谷川先生は茶髪でゆるふわセミロングな美少女だった。


 背が高くモデルのようにすらっとしていた。


 だが出るところは出ておりボンキュッボンだった。


 服の上から分かるほどの長乳だった。L-cupだろうか。


 おっといかんいかん初対面の人に鼻の下伸ばすところだった。


「はい、俺が緋坂航覇です」


「実物がこんなにカッコいいとは思わなかったよ。はあ、マジ、イケメン·····。眼福眼福」


「ありがとうございます。長谷川先生も綺麗ですよ」


「ふふ、ありがとう。それで会ってほしい子って?」


「この子です。おーい、詩音ちゃん」


 詩音ちゃんが柱の影からおずおずと出てくる。


「はじめまして。小泉詩音です」


「ええええ!? 詩音!? コスプレイヤーさんかな、本当本物みたい!!」


「いや、本物の詩音ちゃんですよ」


「え·····? え·····? どういうこと?」


「実は·····」


 俺はことのあらましを話した。


 コンビニから帰ると美少女がいたこと。


 その美少女はスマホの精霊で一緒に異世界転移することになったこと。


 またある日、スーパーから帰ると詩音ちゃんがいたこと。


 詩音ちゃんはライトノベルの精霊だと言っていたこと。


「ええええ!? 精霊!? 異世界転移!? 本当なの?」


「本当です。今から証明します。詩音ちゃん機槍アルヴァンスを出してみて」


「はい、分かりました。具現化せよ、機槍アルヴァンス!!」


 そうして何も無い空間に機槍アルヴァンスを出現させた。


「マジック!? 機槍アルヴァンスだー」


「マジックじゃなくて現実ですよ」


「これは信じるしかないかー。現実は小説よりも奇だね」


「あと、お願いがあるのですが·····」


「なになにー?」


「その·····あの·····俺を先生の弟子にしてくれませんか!?」


 俺はそう告白した。

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