第3章

1.3.1 サーシャの休日

 精霊。


 超古代の時代から人間と共に過ごしてきた生命体。


 精霊召喚の儀で召喚する。


 聖剣を操る精霊は強力無比である。


 十三国の列強はそれぞれ強力な精霊騎士団を保有する。


 ☆


 今日は講堂でダンジョン攻略の優秀者を讃える受賞式があった。


 ダンジョンのラスボスであるミノタウロスを倒した俺は最優秀賞を受賞した。


「コウハ・スカイマーク。ここにダンジョン攻略でのあなたの功績を讃えて最優秀賞を贈ります。おめでとう」


「ありがとうございます」


 学園の理事長から賞状が渡された。


 校内ランキングも一気に30番台まで上がった。


 最底辺の200番台だった俺が成り上がったのである。


「コウ君、おめでとう!!」


「コウハ兄、おめでとう!!」


「兄貴、本当にミノタウロスを倒したんですね。すごいです!!」


「お兄ちゃん、一気に上級者になったね」


「コウハ様ならやってくれると信じてました」


「いや、一姫のおかげだよ。よくやったな一姫」


「えへへ、ご主人様、照れるよう」


 周りのギャラリーも騒いでいた。


「コウハ君、カッコよくて強いって本当最強じゃん」


「ねー本当イケメンだよねー。私アタックしようかな」


「私も私も今度告白してみようかな」


「むー、コウ君が人気者になった。でも1番目の彼女は私なんだからね」


「分かってる分かってる。好きだよ、瑠夏」


「えへへ、ありがとう、コウ君」


 快く思う者も入れば快く思わない者もいた。


「コウハ・スカイマーク……。なんであの女たらしが」


「ぽっと出の新人のくせに調子乗ってんじゃねーぞ」


「ミノタウロスもインチキで倒したんだろ、どうせ」


 ☆


 私、サーシャ・フォン・フレーデスヴェルクは休日にお忍びで外出していた。


 私は先週、皇国の副総督に着任した。


 私は皇国の人達のために働こう、そう決意した。


 それで今日は皇国市民の日常を視察するために外出した。


 ちなみに護衛はついてない。


 無断で外出したからだ。


 実を言うと私は連日の公務で疲れていたのだ、せっかくの休日、羽を伸ばしたいと思ったのだ。


 考え事をしていたら人とぶつかった。


「すみません、私、考え事してて……」


「いえこちらこそ……」


「ええええ!? お兄様!?」


「お兄様? えっと君は?」


 私はマスクとサングラスを外す。


「私ですよ、私。サーシャ」


「サーシャちゃん!? ……いや、サーシャ皇女殿下?」


「今はオフで私たちしかいないのでサーシャちゃんとお呼びください」


「じゃあサーシャちゃん。護衛は?」


「今日はお忍びで外出してるんです。……そうだ。お兄様せっかくだしこの街を案内してくれませんか?」


「ああ、うん、いいよ」


 まず私たちはクレープ屋に向かった。


「東都に来たなら一度はここのクレープ食べないとな!! おいしくてほっぺた落ちるよ」


 私はイチゴのクレープを買った。


 お兄様はチョコのクレープを買った。


「おいしい、このクレープ!! ……お兄様と私で1口ずつ交換で食べませんか?」


「えっ……それって……!?」


 そうこれが夢にまで見た食べさせあいっこだった。


 お兄様としてみたいことだった。


「じゃ、じゃあ遠慮なく……はむっもぐもぐ……イチゴもおいしい」


「お兄様のチョコもいただきますね……はむっもぐもぐ……チョコもおいしい」


 その後はお兄様が見せたい場所があると言って連れてってくれた。


 そこは高台の公園だった。


 東都の街並みが一望できた。


「うわー綺麗な場所ですねー」


「そうだろ俺のお気に入りのスポットだ」


「今日は楽しかったです。……でもシンデレラの時間はおしまいですね」


 黒服の男達がこちらに向かっていた。


「でもまた近いうちに会えると信じてます。お兄様と私は赤い糸で結ばれてるから……」


 私は護衛の方々に連れられていった。


 総督府に帰るのだ。


 今日のお兄様とのデート楽しかったな、また会えるといいな、私はそう思った。

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