第26話 1.2.16 サーシャ・フォン・フレーデスヴェルク
エルクロイド鉱石。
AFGのエナジーとなる貴重な鉱石。
深海で採掘される。
レアメタルの1種でありスマホやPC、自動車、テレビなどの日用品から戦車や戦闘機、AFG、空中鑑などの軍事的な技術にも使われている。
皇国は深海が多い海洋国家であり豊富にエルクロイド鉱石が埋蔵されていると予想された。
帝国が皇国に侵攻したのは豊富なエルクロイド鉱石を欲したのも大きな理由だった。
☆
後日、本当に俺の住むマンションに凪波とサーシャちゃんが引っ越してきた。
今日も俺の家には瑠夏、藍那、凪波、一姫が集まっていた。
「今日みんなに紹介したい人がいる。……入ってくれ」
サーシャちゃんがリビングに入ってきた。
「この子は宮内サーシャ。親父の再婚で俺の義妹となった。凪波の親友で同じ生徒会のメンバーだ」
「みなさん、よろしくお願いします」
「また女!? また女なの!? コウ君!?」
「まさか三股なの光覇兄? それに義妹ってラノベみたいだね」
「わー、よろしくお願いします、サーシャさん」
「瑠夏と藍那安心してくれ。俺はもう振っている!!」
俺は2人にピースサインを作る。
「振ってって……。ええええ!? 告白されたの?」
「兄貴、その話は初耳です。どういうことですか!! いつの間に私の親友に手を出してたんですか!?」
「いや、告白されたから振っただけだって」
「つまりサーシャちゃんは兄貴のことが好きなの?」
「うん……好きだよ」
サーシャちゃんが顔を赤らめて言う。
「兄貴!! なんでこんなかわいい私の親友を振ったんですか!?」
「いや、三股は人としてどうかと思ってな……」
「二股も三股もさして違いませんよ」
「コウ君、私は二股も嫌だったんだからね」
「でも私とお兄様はセフレですけどね」
サーシャちゃんがボソッと爆弾発言をする。
「ええええ!? セフレ!?」
「どういうことですか、兄貴!? やっぱりサーシャちゃんに手を出してたんですか!?」
「光覇兄、もしかしてヤったの?」
「ヤ……ヤってねーよ。ただサーシャちゃんを振ったらサーシャちゃんがセフレ宣言をしただけだって」
「セフレ宣言?」
「お兄様の手を私の胸に押し当ててこう言ったの。『これが証明です。いつでもどこでも私の胸や尻に触ってもらって結構です。これがセフレになるという私の覚悟です。』って」
「な……!?」
「わ、私だってコウ君にはいつでもどこでも胸や尻に触ってもらって結構だよ!!」
「そうだよ!! 光覇兄ならむしろウェルカムだよ!!」
「わわ、お二人は大人の関係なのですね」
それから俺とサーシャちゃんは根掘り葉掘り聞かれた。
☆
数日後。
俺はサーシャちゃんに呼び出されて公園にいた。
何やら大事な話があるらしい。
時刻は夕暮れ時だった。
夕日が綺麗だった。
「お待たせしました、お兄様」
「いや、そんなに待ってないよ。……あの自販機で何かジュース買う?」
「そうですね、そうしましょう」
俺たちはナタデココ入りりんごジュースというものを買った。
「このジュースおいしい!!」
「ナタデココのつぶつぶ感がたまらないですね」
「それで大事な話って何?」
「あの……実は……私」
サーシャちゃんは俺の目をじっと見つめてくる。
顔も赤らめている。
もしや大事な話ってまた告白か!?
それならサーシャちゃんの真剣な様子も分かる。
俺はサーシャちゃんの次の言葉に身構えていた。
「……異世界転移してるんです」
予想外の言葉だった。
ある日夢の中で女神アストレア様に十三国戦記によく似た異世界に転移しないかと誘われたこと。
異世界ファンタジーの小説をよく読んでおり興味があったので異世界転移を了承したこと。
サーシャ・フォン・フレーデスヴェルクという皇女になったこと。
数々の戦争で勝ち続け若き英雄と呼ばれるようになったことを話してくれた。
「こんな話いきなりされても信じられませんよね」
「いや、信じる」
「え?」
「俺も実は異世界転移してるんだ。コウハ・フォン・フレーデスヴェルクとして」
「ええええ!? 本当ですか!?」
「俺だけじゃない。瑠夏も藍那も凪波も一姫も異世界転移してるんだ」
「異世界でもお兄様は私のお兄様だったのですね」
「俺もサーシャちゃんがあの有名な若き英雄だなんてビックリだよ」
「ちょっと待ってください。コウハ・フォン・フレーデスヴェルクは皇国との戦争で死んだのでは?」
「ああ、それは嘘。シュタットフェルト家が守ってくれて今はコウハ・スカイマークとして皇国で過ごしてるよ」
「ええええ!? 嘘!? そうだったのですか!?」
「今はシュタットフェルト学園の学生だ」
「来週、皇国の副総督に着任するので会えるかもしれませんね」
「ああ、異世界でサーシャちゃんと会えるのを楽しみにしてるよ」
なんとサーシャちゃんがあの有名な若き英雄サーシャ・フォン・フレーデスヴェルクだったのである。
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