第22話 1.2.12 覚醒

 AFG。


 魔導装甲。エルクロイド粒子を動力として動く。


 ルグレシアで発達改良された兵器でその戦闘力は通常兵器や精霊を大きく凌駕する。


 ルグレシアの超古代遺跡で発見されたと言われるが真偽は不明である。


 AFGが帝国に伝わったことで軍事情勢は一変した。


 ☆


「え……? うわああああー!!」


「キャー!!」


 俺と一姫は落ちていた。


 ダンジョンの最下層に向かって。


 このままだと墜落死してしまう。


 俺は何か助かる方法がないか頭をひねった。


 AFGがあるではないか。


 AFGには飛行能力が備わっている。


 それでAFGで飛ぼうとした。


 だができなかった。


 スマホの通知を見る。


 AFGのエナジーが切れました。チャージしてください。


 学園から支給されたAFG(一般兵仕様)は20%しかもともとチャージされてなかった。


 なぜ20%しかチャージされてないのかというとエルクロイドが高価であることと今回のダンジョン攻略は第10階層までだったので危険はなく20%で十分と考えられていたのである。


「一姫、飛行スキル使えるか!?」


 精霊は基本的に飛行スキルを持っているのだ。


「そんなスキル分からないよー」


「ですよねー」


 そう一姫には飛行スキルなど覚えさせてなかった。


 戦闘には関係のないスキルだと切り捨てたことが仇になるとは……。


 俺は一姫をお姫様抱っこする。


「わわ、ご主人様、一体どうしたの?」


「しっかり捕まっておけよ。……防御結界!!」


 俺は初級の魔法、防御結界を使った。


 地面に衝突する寸前だった。


 防御結界がクッションとなって俺たちは死なずに地面に降りられた。


 スマホのマップを見ると第89階層だった。


「ご主人様、これからどうするの?」


「神殿でみんなと合流するために転送ゲートがあるボス部屋に向かおう」


「私たちだけで戦うの!?」


「いや、戦わない。転送ゲートまでボスに見つからないように迷彩魔法を使ってたどり着く。それでこのダンジョンからはオサラバだ」


 俺はエネルギー切れとなったAFGを捨てて小銃、拳銃、呪装刀を取り出す。


 それで俺たちは迷彩魔法で次々と現れる魔物との戦闘を極力避けてボス部屋に着いた。


 俺たちは極力音を出さないようボス部屋の扉を開け侵入する。


 スマホでボスモンスターを確認する。


 種族:ミノタウロス

 レベル:280

 カテゴリー:A

 スキル:威嚇、ミノタウロス・アックス


 レベル280!?カンストしてやがる!!


 やっぱり最下層は恐ろしい場所だ。


 こんなの正面から戦ったら勝ち目がねえ。


 ミノタウロスは寝ているようだった。


 起こさないようできるだけ静かに移動する。


 転送ゲートまであと20メートルのときだった。


 カラーン。


 一姫が落ちていた空き缶を蹴ってしまったのだ。


 その音でミノタウロスは起きた。


「ご、ごめんなさい!! ご主人様……私、私!!」


「謝るのは後だ!! 今は逃げるぞ!!」


「グオオオオー!!」


 ミノタウロスは怒っていた。


 睡眠の邪魔をされたからだろうか。


 威嚇してきた。


 転送ゲートまで俺たちは走る。


 あと10メートルといったときだった。


 一姫が転んでしまったのだ。


 それでミノタウロスに追いつかれてしまう。


 戦うしかない。


 俺はそう覚悟を決める。


 俺は小銃でミノタウロスを撃つ。


「くっ……効いてないだと……!?」


 ミノタウロスがアックスを振り上げる。


 やばい予感がする。


 俺の第6感が告げる。


「グオオオオー!!」


「逃げろ!! 一姫!!」


 俺たちはとっさに逃げる。


 すると俺たちがさっきいた場所にクレーターができていた。


「うわあああ!!」


「キャー!!」


 俺たちは衝撃波で吹き飛ばされる。


 これがミノタウロス・アックスというスキルらしい。


 名前の通りの攻撃、だがその威力は戦艦の主砲と同等だった。


 あ、危ねえー!!


 こんなのモロに食らったら即死じゃん!!


 俺と一姫は絶対絶命 のピンチだった。


 ミノタウロスがアックスを振り上げる。


 これまでのコウハの記憶が思い出され時間がゆっくり進んでるような感覚になる。


 走馬灯だった。


 そのときだった。


「力が欲しいか、少年?」


 そんな声が聞こえて美女が現れた。


 その顔には見覚えがあった。


「アストレア様!?」


 そう俺を異世界転移させた女神様だった。


「ごきげんよう、アストレアだよ。……いやー、ピンチだね」


「た、助けてください……」


「うーん、そうしたいのはやまやまなんだけど女神は直接介入できないんだよね」


「そ、そんな……」


「そんな絶望的な顔しないで。直接介入はできずとも間接介入はできるから」


「どうやるんですか」


「まず一姫ちゃんのユニークスキルインプレッション・シーカーを覚醒させるよ」


「インプレッション・シーカー?」


「ああ、S級スキルインプレッション・シーカーを覚醒させる。インプレッション・シーカーは対象のスキルを高速で検索、高速で学習し、スキル模倣するというスキルだよ。じゃ、頑張ってね、バイバイ」


 そう言って俺は現実に引き戻される。


 スマホにユニークスキルインプレッション・シーカーを習得しましたという通知が出ていた。


 ミノタウロスのアックスが俺たちの目前まで迫っていた。


 俺は呪装刀を構える。


 ミノタウロス・アックスを受け流す。


 受け身という技だった。


 今回この技を使えたのは幸運だったからだ。


 2度目は通用しない。


 だがこの時間があれば十分だった。


「今だ、一姫、インプレッション・シーカー!!」


「インプレッション・シーカー!! ……ミノタウロス・アックス!!」


 一姫が聖剣フレイシアでスキルミノタウロス・アックスを使う。


「ギャオオオオー!!」


 ミノタウロスが断末魔をあげる。


 すごい衝撃波だった。


 ミノタウロスが光となって消えその場には大量のジュエルと聖剣が残されていた。


「インプレッション・シーカー……!! 凄い……このスキル最強じゃん」


 こうして俺と一姫は最下層のボスミノタウロスを倒したのだった。

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