第19話 1.2.9 藍那の異世界転移
俺は新作のラブコメを小説投稿サイト『シトラス』に上げていた。
この3日間毎日投稿していた。
3回分しかストックがなかったが。
「日間300PV!?……応援コメントも星もついてる!!」
なんと日間300PVを達成したのである。
俺の作家としてのやる気はうなぎ上りになる。
調子に乗って2時間で2話もストックを作ってしまった。
☆
「光覇兄、この女の子は誰?」
藍那が一姫を指さして尋ねてきた。
「ああ、一姫だ。スマホの精霊だ」
「え? ……え? ……スマホの精霊?」
「藍那さんが戸惑うのも分かりますよ。私も最初聞いたとき戸惑いましたから。兄貴、ちゃんと説明してください」
「ああ、分かった。実は……」
俺は先日起こったことを話した。
コンビニから自宅に帰ったところ美少女がいたこと。
その美少女はスマホの精霊だと言っていてどうやら本当らしいこと。
一姫と名付けて同棲することになったこと。
異世界転移することになったこと。
コウハ・フォン・フレーデスヴェルクという皇子になったこと。
皇帝家を追放され皇国でコウハ・スカイマークとなったこと。
シュタットフェルト精霊学園に通うことになったこと。
「ど、どどど同棲!? 異世界!? 光覇兄と一姫さんも付き合ってるの?」
「いや、付き合ってない。精霊として契約してるだけだ」
「わわ、ご主人様とお付き合いだなんて畏れ多いです〜」
「ふーん。そうなんだ。でもこんな美少女と同棲だなんて光覇兄の貞操が心配だよ……。決めた。私も異世界に行く」
「わー、藍那さんも異世界に来てくださるなんて心強いです」
「いやいやいや、異世界転移しても離れた場所に転移する可能性もあるんだ。異世界は広いんだぞ」
「それでも私は行く。行って絶対光覇兄を見つけ出して異世界でイチャイチャするんだ」
「異世界には私もいるの忘れないでね。私の方がコウ君とイチャイチャするんだから!!」
瑠夏と藍那がバチバチと火花を飛ばし合う。
幼稚園時代もよく俺を取り合ってケンカしてたっけ。
懐かしい、そう思った。
☆
異世界。シュタットフェルト精霊学園。昼休み。
「コウハ・スカイマーク君はいるかしら」
そんな凛とした声が教室に響いた。
アイナ・フォン・ヴァレンタイン。
ヴァレンタイン侯爵家の令嬢で生徒会副会長を務めている。
金髪碧眼の見た目をしておりその凛としたたたずまいから親衛隊というファンクラブもある美少女である。
「俺だけど。ヴァレンタインさん、俺に何か用……?」
「光覇兄!!」
そう言ってヴァレンタインさんが俺に抱きついてきた。
「その呼び方、藍那か!?」
「うん、そうだよ。嬉しい、また会えたね光覇兄」
教室のギャラリーが騒ぎ出す。
キャーキャーうるさかった。
「スカイマーク君とヴァレンタインさんいつの間に恋仲になったのかしら?」
「あ、でも上条さんも結城さんもおられるのに……はっ!! もしかして4角関係!?」
「なにそれ、激アツ展開ですわ!!」
「はいはーい、二人とも離れてー」
瑠夏だった。
「む、この感じは瑠夏ちゃん?」
「そうだよ。こっちの世界では上条瑠夏って言うんだ」
「瑠夏ちゃんこっちの世界でもよろしくね」
「ああ、うん、よろしく」
2人とも笑顔だった。
だが2人とも視線バチバチしているのが見えて怖かった。
「2人とも!! 兄貴がいるんだから仲良くしましょうよ!! ねっ!!」
「心海ちゃんが言うならここは矛を下げよう」
「あっ、私、凪波です。異世界では結城心海って言います」
「心海ちゃん、よろしくー」
「はい、よろしくお願いします」
「……本題なんだけど私をコウハ兄のいる班に入れてくれないかな?」
「ちょっとお待ちください!!」
そこで金髪のツインテールをした美少女が教室に入ってきた。
「何をお考えですか!? アイナ様!? こんな平民と同じ班に入るとは!? あと女たらしと噂のコウハ・スカイマークではないですか!?」
アイナの親衛隊No.1のエレナ・フォン・カレアスだった。
カレアス伯爵家の令嬢である。
「差別は良くないですよー、エレナ。あと、コウハ兄のことを悪く言うのであれば私とて許しませんからね」
「私たちの班はアイナ様がいなければ崩壊してしまいます!!」
「前々から親衛隊のみなさんが仲が悪いことが気になってたんですよねー。この機会にみなさんには仲良くなってもらいましょう」
「せめて……せめて私一人だけでもご同行させてください。アイナ様が心配なんです」
「もうしょうがないですね。でもコウハ兄に一言謝ってください。そうじゃなきゃ同行を認めませんからね」
「分かりました。スカイマークさん、さっきはごめんなさい。どうか私をあなたの班に入れてください」
「ああ、俺はいいですよ。2人を歓迎します」
「ありがとうございます」
こうしてアイナとエレナの2人が班に入ってきたのである。
まさか藍那がアイナに転移するとは思わなかった。
またもや奇跡が起きたのである。
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