1.2.8 二股

 俺は公募でもラブコメを1本書き始めようと思ってる。


 出す賞として皇ファンタジー、流星、NJ、角原ポケット、オーバープラス(OVP)、GE、集迅社IP、大学館を候補に考えている。


 夢としては皇ファンタジー大賞を受賞して作家デビューすることだ。


 なぜ皇ファンタジーかというと皇ファンタジーの本をたくさん読んでおり憧れがあったからだ。


 また長谷川凛先生と瀬戸光瑠せとひかる先生のファンだからだ。


 長谷川先生はキミキセの原作者でありラブコメ、青春系、百合系の作家である。


 瀬戸先生は十三国戦記の原作者であり戦記もの、スペースオペラ、時代小説の作家である。


 俺は2人の作品を全て追っており大ファンだった。


 ☆


 時間も時間だったので俺は藍那を家に送り届けていた。


 話してて分かったのだが俺たちは同じ横浜海洋大学の大学生だった。


「ええええ!? 光覇兄、横浜海洋大学だったの!? ……でも昨年1年間、光覇兄のこと見てないんだけど」


「ああ、昨年は1年間休学してたから」


「ふーん、そうなんだ」


 最寄り駅から徒歩20分。


「着いたよ、光覇兄」


「ってここ俺の住んでるマンションじゃん!!」


「そうなの、光覇兄?」


「まさかお隣さんじゃないよな……」


「あはは、そんな奇跡起きるはずが……」


 そう言って俺は藍那の部屋に紹介される。


「ここだよ、光覇兄」


 207号室。俺の部屋は206号室。お隣さんだった。


 ちなみに205号室が瑠夏の部屋である。


「ええええ!? マジでお隣じゃん!!」


「運命……。これはきっと運命の赤い糸が私たちを引き合わせたんだよ!!」


「ちょうどいい。俺の彼女に藍那のこと紹介して二股の許可をとろう」


「うん、分かった」


「ただいまー」


 美少女がダッシュで抱きついてくる。


 俺の彼女、瑠夏だった。


「おかえり、コウ君!! 帰り遅いから心配してたんだよー。……この女の子は誰?」


「佐倉藍那。ほら幼稚園のとき一緒だったろ」


「あ、ああ、藍那ちゃんか!! 久しぶりー!!」


「光覇兄、この美少女は誰ですか?」


「こっちは水篠瑠夏。俺の彼女だ」


「えへへ、今はコウ君の彼女なんだ」


 瑠夏が誇らしげに胸を張る。


「ええええ!? 瑠夏ちゃん!? ……ちょっと待って。瑠夏ちゃんが彼女!? 彼女って2人は恋人なの?」


「ああ、そうだぞ」


「そうだよ。……で、何で2人で帰ってきたのかな?」


「俺たち付き合いたいって思ってるんだ」


「は?」


「だから付き合いたいって思ってるんだ」


「え……嘘……私、振られたの?」


「違う違う。俺は二股させてほしい、そう言ってるんだ」


「はああああ!?」


「兄貴たち、何騒がしくしてるのー?」


 妹の凪波がリビングから様子をうかがいに出てきた。


「うえーん、凪波ちゃーん」


 瑠夏が泣きじゃくっていた。


「ど、どうしたの瑠夏さん?」


「コウ君が……コウ君がひどいよー」


「よしよし、兄貴と何があったんですか?」


「コウ君が藍那ちゃんと付き合いたいって二股させてほしいって言うんだよー。浮気だよ、浮気!!」


「えっマジですか。玄関じゃご近所迷惑だから3人ともリビングに入って兄貴には詳しい話してもらいますよ」


 こうして俺たちはリビングに入った。


「ご主人様、おかえりなさい」


「ああ、ただいま、一姫」


 一姫はアイスを食べていた。


「で、兄貴、何があったか教えてくれますか?」


「ああ、実は……」


 電車で美少女に会って一目惚れしたこと。


 その美少女が幼なじみの藍那だったこと。


 藍那に告白されたこと。


 瑠夏に二股の許可をとろうという話になったことを話した。


「兄貴……兄貴は馬鹿ですか。瑠夏さんというかわいい彼女がいながら他の女の子に浮気するなんて」


「それは……すまないと思ってる。……でも一目惚れだったんだ。許してくれ」


「兄貴が瑠夏さん一筋で相思相愛だからこっちも身を引いたってのに。藍那さんも二股とかOKなんですか?」


「私は二股を断ったら別れるだけだからOKだよ。瑠夏ちゃん、お願い、私たちの交際を許して」


「瑠夏、この通りだ。俺からも頼む」


 俺は瑠夏に土下座する。


「ヒック……ヒック……頭を上げてコウ君……分かった、分かったから。……コウ君が少しでも私のことを見てくれるなら二股しても良いよ……」


「兄貴、聞きましたか?こんな健気でかわいい彼女を悲しませるような真似したら私が許しませんからね」


「ああ、俺は瑠夏と藍那両方責任もって幸せにするつもりだ」


「で、でも1番目の彼女は私だからね。……本当は順番とかじゃなくて私だけを見てほしかったけど」


「ああ、1番目の彼女が瑠夏、2番目の彼女が藍那それを念頭に置いておくよ」


 こうして俺は二股の許可を何とかとったのである。

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