第14話 1.2.4 瑠夏との交際①
私、水篠瑠夏はコウ君との思い出を振り返っていた。
1つ目は告白したときのこと。
「このまま、あんな美少女と一緒に暮らすなんてコウ君の貞操が危ないよー。……だから私が付き合ってあげる」
「え?」
「この2年半ずっと、ずっと待ってたんだよ。一瞬だってコウ君のこと好きだって気持ちは消えなかった。ううん。むしろ大きくなってるくらいだった。だから好きです。私と付き合ってください」
言った。
ついに言った。
一姫ちゃんという美少女と同棲していることを知って焦った私は勢いで告白してしまった。
でもコウ君のことが好きだって気持ちは嘘偽りのない真実だった。
「……」
コウ君からの返事はない。
突然の告白に驚いてるようだ。
心臓がバックバックうるさいし手汗もやばいくらい出ていた。
「ああ、いいよ。俺ら本当に付き合おっか」
「本当に!? 嬉しい!! またよろしくね、コウ君!!」
私は嬉しさのあまり泣いてしまった。
ああ、こんな幸せなことがあっていいのだろうか。
飛び上がりそうなくらい嬉しかった。
「ほら、瑠夏そろそろ泣きやめよ。なんでそんなに泣いてるんだよ」
コウ君は苦笑していた。
コウ君がハンカチを差し出してくる。
「あ、ありがとう、コウ君……。だって私不安だったんだ。コウ君が私のこともう忘れちゃってるんじゃないかって……」
それでも私は全然泣きやむことができなかった。
「俺もずっと好きだった。瑠夏のこと」
「本当? 本当なの? でも私の方がずっとずっとコウ君のこと想っていたんだからね。」
「ああ、分かった。分かった」
コウ君はまた苦笑していた。
ああ、これが幸せか……。
私は幸せで心が満たされていた。
☆
2つ目は異世界で再会したこと。
「おはようございます。瑠夏さん」
「……」
この子だと思った。
私の直観がそう告げていた。
でもそんなことありえるのか半信半疑だった。
それで私は返事が出来なかった。
「あのー、瑠夏さん?」
「……あなたの名前は?」
私は自分の直観を信じて聞いてみることにした、君の名を。
「え?コウハ・フォン・フレーデスヴェルクですけど」
コウハ・フォン・フレーデスヴェルクーーコウ君の異世界での名前だった。
「コウ君!? 本当にコウ君なの!?」
なんと私の直観が当たっていたのである。
「その呼び方、もしかして瑠夏なのか!?」
「そうだよー。私は水篠瑠夏だよ」
「マジかよ……」
これはきっと運命だ。
運命の赤い糸が私たちを巡り合わせてくれたのだ。
嬉しいよ、コウ君。
☆
俺は中学の時、半年で15人に告白され、俺がモテることを自覚した。
初恋の相坂さんがいたので全部断っていた。
初恋の相坂さんに告白して失恋に終わった頃のことだ。
「このままだとコウ君の貞操が危ないよー。……だから私が付き合ってあげる」
こうして俺と瑠夏は付き合うことになった。
瑠夏は美少女で幼なじみだったので話していて楽だったし、ある程度好意を抱いていて特に断る理由がなかったので告白を受けることにした。
瑠夏との恋人関係はとても楽しかった。
いろんな場所に2人で行った。
カラオケ、ゲームセンター、遊園地、水族館、夏祭り……etc。
瑠夏と付き合うことで学校で告白されることは無くなった。
その点は瑠夏と付き合うメリットだった。
告白を断るのは心が痛むのだ。
あと、瑠夏と付き合うことで相坂さんに対するこの失恋を忘れられるのかなと思った。
学校からの帰りに一緒に手を繋ぐだけで顔を赤らめてしまうような初々しい関係だった。
セックスはもちろんしたことはなかったし、キスも数えるくらいしかしていなかった。
ファーストキスは遊園地の観覧車の中だった。
無言になり見つめ合う俺たち2人。
瑠夏が目をつむる。
俺たちは自然とキスをした。
唇がすごく柔らかかったことは覚えている。
別れは突然だった。
受験に集中したいという俺の一方的な頼みだった。
「……え……嘘。私、待ってるから……。受験が終わるのずっと待ってるから」
別れを切り出したとき瑠夏は泣いていた。
こうして5年半の交際期間が終了した。
☆
そして今に至る。
「ふふ、どうしたの? コウ君」
「いや、昔のことを思い出しててな」
「昔のこと?」
「ああ、俺が瑠夏のことを振ったときのことだ。あのときはゴメンな」
「ふふ、まあ、もう一度付き合えるようになったから結果オーライかな」
「でも俺は瑠夏のことを泣かせてしまった。その罪は一生残ると思う。……俺が二浪しても本当にずっと待ってくれてたな、ありがとう」
「言ったでしょ、受験が終わるのずっと待ってるからって。有言実行でしょ」
「ああ、本当に長い間待たせてすまなかった」
「コウ君、もう謝らなくてもいいよ。私たちは付き合うことができた。分かりあえたよね」
瑠夏は飛びっきりの笑顔でそう言った。
その笑顔はとても美しい、そう思った。
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