第2章

第11話 1.2.1 シュタットフェルト精霊学園

 ダンジョン。


 30年前、突然発生した遺跡。


 超古代の文明のテクノロジーによって生み出されたものであり、なぜ現代になって発生したのかは不明。


 ボスの魔物による試練を乗り越えた精霊に聖剣を与える。


 聖剣も超古代の文明のテクノロジーによって生み出されたものであり強力無比である。


 精霊騎士団に入りたいものは精霊に聖剣を持たせるのが加入条件であり、ダンジョン攻略が精霊騎士としての登竜門とされていた。


 ☆


 コウハ・スカイマーク。


 それが俺の新しい名前だった。


 いわゆる偽名である。


 皇帝家だとバレると命の危険があったからである。


 なぜなら皇国への侵攻によって俺とシルファは死んだものだと本国ではされていたからである。


 皇帝家である俺たち2人は人質として皇国に渡航したが、野蛮な皇国人に殺され、それに激怒した帝国臣民は皇国との戦争を支持したというストーリーがあった。


 つまり俺たちは政権にとって生きていたら不都合であり、今でも政権から暗殺者が送られていた。


 その暗殺者から俺たちを守ってくれたのがシュタットフェルト公爵家だった。


 シュタットフェルト家は俺のお世話係だったアスハの家であり、昔から親交があったので今回の皇帝家追放でも真っ先に後見人に名乗り出てくれた。


 皇帝家追放されたとはいえいまだに皇族である俺たちはカードとして魅力的だったし、シュタットフェルト家が皇国に進出しようとしていたのも俺たちを後見する大きな理由となった。


 チリンチリーン。


 通学の準備をしていると呼び鈴が鳴った。


 アスハが玄関に向かう。


 数分後、戸がノックされる。


「コウハ様、瑠夏様がお迎えに来られました。」


 俺とシルファは上条家に預けられていたが戦後、シュタットフェルト家の屋敷に住まわせてもらっている。


 シュタットフェルト家の屋敷はとても広くまるで帝宮のようだった。


 またここでもアスハは俺のお世話係のメイドとして働いてくれた。


 もう皇族でないのだからお世話係はいらないと言ったのだがアスナは頑として譲ろうとしなかった。


 そんなこんなで俺とアスハはいまだに主従関係だった。


 俺はシルファ、瑠夏、アスハと共に徒歩で学園に向かう。


「そういえばコウ君、今日はクラス替えの日だね」


「そうなの、お兄ちゃん?」


 シルファは普段はお兄様と呼んでいるがふとした瞬間に素になると昔のようにお兄ちゃん呼びになるという設定である。


 お兄ちゃん呼びは突然されるとドキッとする。


 だがとてもかわいいと思う。


 こんなかわいい妹がいるなんてコウハは幸せ者だと思った。


 つい、読者視点になってしまうな、俺は。


「うん、みんな同じクラスになるといいな」


 そんなこんな雑談をしていると学園に着いた。


 シュタットフェルト精霊学園。


 名前の通りシュタットフェルト家が設立した学園である。


 帝国人と皇国人が半々の自由な校風である。


 精霊騎士とAFGのパイロット、エンジニアを育成する精霊学園である。


 ルグレシア戦争以後、精霊や精霊使いがAFGのパイロットとなることがスタンダードとなった。


 学園でも精霊や精霊使いがAFGのパイロットとなることを推奨している。


 この学園には3つの特徴がある。


 第1に精霊学園ということで精霊使いとしての技術の基礎・応用・実戦を中等部・高等部の6年間で叩き込まれる。


 精霊使いの戦術、精霊のスキル、そして聖剣などが教えられる。


 第2に中等部ではパイロット・エンジニア共通となっている。


 パイロット科志望のコウハでもエンジニアとしての基礎を叩き込まれる。


 なぜならパイロットでもある程度は自分のAFGを修理できなければ戦場では生き残れないからである。


 第3に教養である。


 教養としてフレーデスヴェルク語、最近、世界共通語となりつつあるエールラント語、数学、歴史、地理、神学、法学を学ぶ。


 校門のすぐ近くでクラス替えの表が貼ってあった。


「やったああ!! お兄様と同じクラスだ!!」


「コウ君、またよろしくね!!」


 シルファと瑠夏とは同じクラスだったがアスハとは違うクラスだった。


「まさか違うクラスになるなんて……メイド失格です。」


 こうして俺たちは別れて教室に向かった。


 始業式ということで学校は半日で終わって屋敷に帰った。

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