第7話 1.1.5 元カノ兼幼なじみ
俺は帝宮で眠った。
寝て起きたら現実世界だった。
どうやら異世界と接続するためには睡眠がトリガーとなるらしい。
今日は一姫とショッピングモールに来ていた。
一姫と生活するにあたって日用品をいろいろ購入する必要があったからだ。
「だーれだ?」
その時突然俺の目が誰かの手によって隠される。
背中に当たっているこの幸せな感触は……。
「その声、
「ピンポン! ピンポン! ピンポーン!!」
彼女の名前は
俺の幼なじみで幼稚園時代から高校3年まで大学1年(仮面浪人していたとき)はゼミ、体育、英語のクラスがずっと一緒という腐れ縁である。
また中学1年から高校3年まで付き合っていた彼女というのが瑠夏である。
彼女はツインテールというのだろうか(あまり女子の髪型に詳しくないので分からない)地雷系の髪型をしており、地雷系のファッションをしている。
ザ・オタサーの姫といった感じである。
ただ容姿が悪いのかというとそうではなく、一姫と比べても劣らないくらい美少女である。
子犬のように元気で喜怒哀楽の感情表現が激しい女の子である。
「あなたの可愛い彼女、瑠夏ちゃんだよっ。」
「は? 彼女?」
「だって受験に集中したいと言って別れて受験終わったらまた付き合おうって約束したじゃん」
「いやいやいや、そんな約束してねーから」
「っていうかその女誰?」
瑠夏がトーンを下げて聞いてくる。
「一姫だ。スマホの精霊だ」
「は?」
「だからスマホの精霊だ」
「え? ……え? コウ君ついに頭がおかしくなったの?」
瑠夏がそう思うのも常識から考えて当然のことであろう。
俺でさえいまだに半信半疑なのだから。
ちなみに瑠夏は昔からコウ君と呼び懐いてきていた。
「いや、信じられない話だと思うけど本当なんだよ」
「詳しい話聞かせてもらってもいいかな?」
俺たちはフードコートに入る。
長い話になるので落ち着いて話ができる場所でしようということになったのである。
ジュースを注文した。
「コウ君のメロンジュース1口もらってもいいかな?」
「いや、それは……」
「はい、遅いー。……もうもらってるもんねー」
そう言って瑠夏が俺のメロンジュースのストローに口をつけた。
俺はメロンジュースのストローをじっと見る。
ちょっと待て。
これってもしかしてもしなくても間接キスなのでは?
次に口をつけるハードルが一気に上がった。
「コウ君、どうしたのー? 飲まないのー?」
瑠夏がニヤニヤしながら話しかけてくる。
俺は諦めて口をつけた。
「やったー、コウ君と間接キスだー!!」
「お前なあ!? こっちは意識しないようにしてるのにそういうこと言うなよ」
「お二人は仲良しさんなのですね」
一姫がニコニコ笑いながら話しかけてきた。
「仲良しだなんて、えー? 私たちがお似合いのカップルなのは当然のことだけどー。……で、2人はどうして一緒なの?」
「実は昨日……」
俺は昨日起こったことを話した。
コンビニから自宅に帰ったところ美少女がいたこと、その美少女は自分がスマホの精霊だと言っていてどうやら本当らしいこと、一姫と名付けて同棲することになったこと、異世界転移することになったこと、コウハ・フォン・フレーデスヴェルクという皇子になったこと、精霊を召喚して一姫と再会したことを。
「どどどど同棲!? 異世界!?」
「ああ、信じられないような話だけど本当なんだよ」
「なんでスマホの精霊だって分かったの?」
「ああ、それは俺の検索履歴が分かったから……あっ」
言ってからそれが失言なのが分かった。
「え? 検索履歴? もしかしてエロいの? エロいの?」
案の定、瑠夏がおちょくってきた。
「だーっ!! そうだよ、エロいのだよ!!」
俺は開き直るしかなかった。
「あなたは本当にスマホの精霊なの?」
「はい、私はスマホの精霊です」
一姫が笑顔でそう応える。
改めて思うけど一姫って本当に天真爛漫だよな。
「ふーん。今は信じてあげる」
「ありがとう、瑠夏」
「ご主人様、ちょっとお手洗いに行ってくるね」
一姫はそう言って席を立つ。
「このままあんな美少女と一緒に暮らすなんてコウ君の貞操が危ないよー。……だから私が付き合ってあげる」
「え?」
「この2年半ずっと、ずっと待ってたんだよ。一瞬だってコウ君のこと好きだって気持ちは消えなかった。ううん。むしろ大きくなってるくらいだった。だから好きです。私と付き合ってください」
「……」
俺は突然の告白に言葉が出なかった。
瑠夏と再び付き合うか。
正直悪くない。
初恋の女の子初音ちゃんにはつかさという彼氏がいて諦めなければ心の整理をつけなければと思っていた。
瑠夏と付き合うことで初音ちゃんを忘れることができるだろう。
それに瑠夏は初音ちゃんと同じくらい美少女で幼なじみなので気を遣わなくてもいいというのもメリットだった。
あと元カノなのでまだ瑠夏のことが好きだという気持ちが俺の心の中にあった。
「ああ、いいよ。俺ら本当に付き合おっか」
「本当に!? 嬉しい!! またよろしくね、コウ君!!」
瑠夏は嬉しさのあまり泣いていた。
泣いてる姿も可愛いと思った。
この子のことは俺が守る、そう誓った。
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