1.1.2 異世界転移

「一緒に異世界転移してくれませんか?」


「異世界転移?」


「はい、一緒に異世界に行ってほしいんです」


「いやいやいや、異世界ってどうやっていくんだよ」


「今日、寝ることで私の上司の女神アストレア様に会うことができます。詳しい話はアストレア様に聞いてください」


 精霊の次は女神か……。


 何でもありだな。


「分かった。寝ればいいんだな」


「はい、ぐっすり眠っちゃってください」


 それで俺は部屋の明かりを消して寝ることにした。


 ☆


 俺は夢を見ていた。


「ごきげんよう。私は女神アストレアだよ」


 美女が俺の夢に出てきた。


「スマホの精霊から話は聞いてるかな?」


「はい……。ただいきなり異世界って言われても意味不明なんですが」


「君には『十三国戦記』に似せて作られた世界の登場人物になってもらうよ」


 十三国戦記とは帝国主義時代に十三国の列強が覇権を求めて戦うというラノベである。


 十三国戦記では精霊と契約して戦う精霊騎士が活躍し、精霊騎士の数がその国の強さとほぼイコールとなっている。


 俺の愛読書であり10回は読み返したくらい大好きな作品だ。


「十三国戦記!?」


「おお、食い付きがいいね」


「つまり精霊を使役できるのか!? ……でも精霊を使役するためには精霊と契約しないといけないのでは……。あっ待てよ。もう俺には一姫がいるから……!?」


「おお、察しがいいね。君にはスマホの精霊と契約してもらうよ。一姫ちゃんって名付けたんだっけ。一姫ちゃんはチュートリアルのプレゼントだよ」


「でもまだ異世界に行くかは決めてないんですけど」


相坂初音あいさかはつね


「え?」


「君の初恋の相手相坂初音ちゃんも異世界転移してるよ」


 え!え?ええええ!?


 相坂さんは中学1年のときの初恋の相手だ。


 半年だけクラスが一緒で俺の一目惚れだった。


 メガネをつけているのがとても可愛いかったのだがメガネを外すと超絶美少女で心臓を撃ち抜かれた。


 相坂さんは誰とでも仲良くなる性格で図書委員会で一緒になった俺にも優しく接してくれて仲良くなった。


 図書委員会で仕事を一緒にしたときにこう言われた。


「宮内君って優しいね。宮内君みたいな人好きだな」


 好き·····!? 好き·····!? 俺のことが好き!?

完全に脈アリじゃないか!!


 席替えのとき奇跡が起こった。


 席が隣同士になったのである。


 俺は顔を赤らめてクラスメイトにも相坂さんが好きだという気持ちがバレている状態だった。


「宮内君と隣になって私、嬉しいな」


 それで俺は決意した。告白することを。


「相坂さん、す、す、好きです!!付き合ってください!!」


 初音ちゃんは伏し目がちになってこう言った。


「ごめんなさい。宮内君は仲のいい友達としてしか見られないの」


「でも俺のこと好きってこの前言ってたんじゃ·····!?」


「あくまで友達としてだよ」


 その後、相坂さんは転校した。


 俺の初恋は失恋に終わったのだった。


「その相坂初音ちゃんは現実世界である人と付き合ってるんだー。残念だったね。ご愁傷さま」


「そ、そんな……。相手は誰なんですか?」


葉山はやまつかさ君だよ」


「ええええ!? つかさ!?」


 葉山つかさは俺が一浪目の仮面浪人していたときの友達である。


 イケメンでとても優しい性格をしている。


 それで俺が裏切ってしまったと後悔している友達である。


「そ、そうか、つかさ……つかさなら安心して任せられる、な……」


「異世界に行ってみたくなったかな?」


「まだ異世界で生き抜ける自信がないのですが……いや、だって、ねえ?」


仲村優なかむらゆう


「え?」


「君の生き別れの実妹仲村優ちゃんも異世界転移してるよ」


 え! え? ええええ!?


 優!?


 優は俺の生き別れの実妹である。


 両親の離婚により母方についていった優は遠い場所に引っ越しておりここ10年以上音信不通である。


 幼稚園の時に離婚したのでまだスマホを持っておらずLINE交換ができなかった。


 住所や固定電話の番号も分からなかったので連絡ができなかった。


「マジですか。行きます。行かせてください」


 俺は重度のシスコンなのである。


 生き別れの妹ともう1度会えるかもしれない、それだけで異世界に行く理由となった。


「よくある異世界転生じゃなくて異世界転移だから安心してね。死ななくても大丈夫だよ。トラック転生とか経験しなくて良かったね。君が寝ている間に異世界に接続するようにするよ。ただ異世界で死んだら二度と異世界に行けなくなるからそこだけは注意してね」


「……なるほど」


「それともう1つ。異世界転移の記念に一つだけチートスキルを与えよう」


「チートスキル?」


「そう、チートスキル。何でもいいよ。未来を予知する能力とか瞬間移動とか絶対遵守の力とか何でもありだよ」


「タイムリープ。タイムリープでお願いします」


 タイムリープが最強のスキルだと考えている俺は即座にそう答える。


「タイムリープかー。なかなか面白いスキルを選ぶね。いいよ。タイムリープできるように調整してあげる。じゃあ、行ってらっしゃい」


 そうして俺は突然、光に包まれた。


 あまりの眩しさに目を開けていられなかった。


 こうして俺は異世界転移することになった。




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