第1章

1.1.1 ボーイミーツガール

「はじめまして!! ご主人様!! 会いたかった……会いたかったよ〜!!」


 そう言ってその美少女は俺に抱きついてきた。


 美少女に抱きつかれるのは嬉しいのだが困惑が嬉しさを上回っていた。


「待って。ちょっと待って。君は誰?」


「私はスマホの精霊。難しく言うとスマホの概念が具現化した存在だよ」


 そういえば俺、スマホ家に置き忘れたんだよな。


 どこに置いたっけ。


 あった、あった。


「このスマホの精霊だっていうのか、君は?」


「そうだよ」


 これはガチめに警察に通報した方がいいのでは?


 俺はスマホで110番を押す。


 しかし、ブロックされましたと通知が出る。


 な、なぜだ。


「今、警察に通報しようとしたでしょー。ヒドイなー。私はスマホ、スマホは私なの。だからスマホを操作するのもお手のものなの」


「……な、なんだと!? ……スマホの精霊? そんな非科学的なことがあるわけが……」


「爆乳全裸」


 え?


「スキニー、尻、女子大生」


 ちょいちょいちょい!?


 俺の検索履歴じゃないか!?


 何で知ってるんだ!?


「ママさんバレー、Tバックブルマ。ガーターベルト、エロい。歯科衛生士、爆乳」


「ストップストップ!! 信じるから!! 君がスマホの精霊だって信じるから!! 俺の性癖をこれ以上言わないでくれ!! 恥ずかしくて死んじゃう!!」


「信じてくれましたか、ご主人様」


「……本当に君はスマホの精霊なのか?」


「はい、そうですよ。私はスマホ、名前はまだない」


「な、なんだって。君、名前無いの?」


「はい、名付けてくれますか?」


「……うーん。そうだな……一姫いちひめなんかはどうだ?」


 一姫は俺が最近、読んだ小説のヒロインだ。


「一姫……!! 一姫一姫一姫!! 素敵な名前、ご主人様ありがとう!!」


「どういたしまして。」


「……ご主人様、お願いがあります」


「お願い?」


「一緒に異世界転移してくれませんか?」

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