宇宙人が「地球を売れ」と言ってきた

たまーにショートショートを上げます

宇宙人到来

耐熱殻に覆われた宇宙飛行機が灼熱をまといながら、総理官邸の前に着陸した。


中から出てきた宇宙人は総理大臣に向かって


「この星を買いたいんだがいくらだね?」


といった。



「いやいや、なんだね君は?突然現れて。」


周りにいた警備員が少し怯えた表情で、近づいてくる。


「すまないね、名前も言わずに売ろう、買おうというのは、売買契約以前の問題だったな。


改めて名乗ろう、コロラド星系からきたノーマン星人だ。よろしく頼むよ。」


総理は、困惑した表情をみせながらも、ノーマン星人と話をするために総理官邸へと入っていった


話によると、ノーマン星人は、母星から約97光年離れた星、イカリ星のメクジ星人と戦争中であるらしい。


彼はその斥候部隊で、イカリ星からちょうど20光年離れた地球を、前線基地として活用したいらしい。


そして、地球の海に含まれる海水、その塩分がメクジ星人にとって非常に有害で即効性のある化学兵器になるようだ。


一連の話を話した後にノーマン星人は続けていった


「私たちの技術力をもってすれば、この星の制圧は数週間で終わる。しかし、戦時中に余計な出費は押さえたいものでね。たった10分でなんの被害もなく、売ってくれた方が楽なんだよ。」


「だから、早く売ってくれないかね?」


総理の額に汗が流れた。


「すまない、何分急なものでね、私たちにも少し考える時間が欲しい。」


「かまわないよ」


そう言って総理は立ち上がって大臣とともに部屋を出た。





「総理、これは何か敵対国の攻撃かもしれません。聞く意味はないですよ。」


そう若手の大臣は言う


「いや、もし本当にこの星を買いに来ているのだとしたら国防以上に重要な大問題だ。今すぐ国連に連絡を」


「そんなことはすでに行っている。」


法務大臣の言葉を総理がそう言って遮った


「しかし、おそらく時間の無駄だろう。」


「私たちに残された時間は少ない。彼らは数光年離れた惑星間を移動し、おそらく彼一人で人間を、国家を壊滅させる能力を持っているのだろう。地球が戦略的に重要なら1か月は待たずに強硬手段に出るやもしれん。


しかし、もし彼らに地球を売却し海水が化学兵器として用いられたら海洋環境は急速に悪化し、気象問題や地殻変動を引き起こし、地球にいる生命は息絶えるだろう。」


「この問題は国連で世界中と話している時間はないのかもしれないんだよ。」


そう総理が言うとその場にいた官僚たちは言葉を止め、会議室には蝉の鳴き声だけが響いた。





ある日、上空に艦隊規模の飛行船が襲来した、


彼らは大量の化学薬品をばらまき、国民が叫ぶ音が遠くから、足元から、目の前から聞こえてくる。空から大量の液体が地面を汚していく。


シェルターへ走り出すと、橋の向こう側に着陸した兵士輸送艦が見える


中から重武装をした2対4本の手足をした生物が現れた。


「ああ、地獄だ。」


薬品で足が崩れ落ち、もう歩けもせず地面に倒れこんだ彼は、




メクジ星人の彼はそう思った。





最後に残ったのは海水に溶けたメクジ星人の死体と、必死に海水を撒くノーマン宇宙軍の歩兵となした人間と、もう何もいないかつての地球だけだった。

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