11
「おばあちゃん、ハルちゃんがいたよ!
キツネのお面の男の子が…ボクを助けてくれたんだ」
爽は、おばあちゃんに向かって言うと、
「あのお面は、どうしたの?」
おばあちゃんは、静かな顔をして聞く。
「えっ?」
そうだ、あのお面…どうしたっけ?
確か、持って行ったはずなのに…
「ない!
どこに落としたんだろう?」
おかしいなぁ~
頭をひねる爽を見て、おばあちゃんが笑う。
「きっと、あの子の手に、戻ったんだよ」
そう言うと、ポンと爽の背中に手を置く。
すでに、おばあちゃんの身元を追い越した爽だ。
だがおばあちゃんは、小さな子供にするように、ポンポンと
爽の背をたたく。
「ハルちゃんに、お礼を言わないとね」
おばあちゃんは、にこやかにそう言う。
「ハルちゃん?」
まさか、あのお社の中に、また入るの?
さすがに、爽は後ずさりをする。
おばあちゃんは、あはは…と笑うと、
「あそこじゃなくて、こっちだよ」
そう言うと、爽の手を引いた。
ゾロゾロと、爽とトモヒロとオジサンを引き連れて、
おばあちゃんは無言で階段を下りる。
「いい祭りだったねぇ~
これで、今年もいい年になりそうだ」
満足そうに、おばあちゃんが一人、つぶやく。
「ここだよ」
連れて行かれたのは…階段の下にあるお稲荷さんだ。
「ここ?」
戸惑う爽に向かい、おばあちゃんはうなづく。
「ほら、あそこ、見てごらん!」
キツネの足元を指し示す。
そこには、キツネのお面と、ハルちゃんの写真が落ちている。
「あの子…弟と一緒に、行ったんだねぇ」
ニコニコしながら、おばあちゃんが言う。
「弟?」
「そう、ハルちゃんの弟だ」
「あの…キツネの男の子?」
「そう、草ちゃんだよ」
草ちゃん?
爽はハルちゃんの写真を見つめる。
その時、どこかから、
「ありがとう」と声が聞こえたような気がした。
夜明けの晩に、つると亀がすべった。
後ろの正面、だぁれ…
完
キミをさがして… daisysacky @daisysacky
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