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「どういうこと?」

 オジサンが言うことが、爽にはわからない。

「たぶん…あの子が、ソウを助けてくれたんだなぁ」

ニコニコしながら、ご神木の方を指差す。

「なに?」

 爽は、かがり火の方を向く。

「今日はお祭りだ。

 ばあちゃんが…爽の名前を書いた人型を、あのご神木につけたんだ」

そう言って、その木を指し示す。


「へっ?」

 確かに、つけたはずだ。

トモヒロは、何かに気が付いたように、ご神木の方に近づく。

「えっ?」

 ご神木の上の方には、鬼のお面がつるされている。

木の幹には、白くて太いしめ縄が張られている。

そこに貼り付けたはずの、あの白い紙が…

「ない」

思わずつぶやく。

「えっ?ないって、何が?」

爽には、さっぱりわからない。


「あぁ、ソウ!おかえり」

 おばあちゃんは、少しも慌てた様子もなく、まるで当たり前の

ようにうなづく。

「おばあちゃん、何でここにいるの?」

てっきり家にいる、と思っていたのに!

「決まっているだろ?

 今日は、お祭りだよ」

そう言うと…

「おじいちゃん、守ってくれたんだねぇ」

鬼のお面を見上げる。

 爽には、何が何だか、まだよく呑み込めないけれど…

おばあちゃんが笑うのを見ていたら、そうなのかもしれない…

と思う。




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