第5章 キミをさがして…
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「ばあちゃん…あの子たち、また帰って来ていないのか?」
その夜、爽のおばあちゃんの家には、村人たちが集まって来た。
「大丈夫か?
みんなで、手分けして探すか?」
「憲弘も、帰って来ていないんだろ?」
「なに?憲弘もか?」
「そういえば…あの子の友達も、一緒なんだってな!」
事件らしい事件は、ろくに起こったことのないこの村では…
ハルちゃんの事件以来の大騒ぎとなる。
「まさか、あの子が…からんではいないだろうな?」
ノリヒロと仲のいい佐伯君も、心配そうに眉をひそめる。
「ハルちゃんが?」
そのひと言に、一同はシンと静まり返る。
「大丈夫だよ。憲弘がついているのだから、ハルちゃんも手出しは
しないよ」
その割りには、おばあちゃんは落ち着いている。
「えっ」
鬼頭さんも、村長さんも…顔を見合わせ、この人を一人にしても、
大丈夫だろうか…と、ひそひそと話をする。
「大丈夫、必ず祭りには、帰って来るはずだよ。
あんたたちも、ご苦労だけど…
いつも通りにしてくださいな」
ご苦労さん…と、おばあちゃんはみんなを帰そうとする。
「ホントに、大丈夫か?
うちのを、ここに来させようか?」
神社で案内をした鬼頭さんも、責任を感じたのか、おばあちゃんに
提案する。
「何の心配もいらないよ!
みんな、明日には帰って来るからね!」
なぜかキッパリとそう言い切ると、おばあちゃんは強引に、村長たちの
背中を押す。
「あの人は、ああ言うけど、大丈夫だろうか?」
家を後にしたところで、佐伯君は鬼頭さんに話しかける。
「うん…まぁ、遅いし…
明日の朝、みんなで手分けをして探そうか」
そう言うと、
「まぁ、あの人がああ言うから、一応祭りの準備はしておこう」
鬼頭さんは、全員を振り返って、声をかける。
「もう、宮司さんも呼んでいるし…
何かあったら、あらためて決めよう」
そこで解散することとなった。
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