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そんなに簡単に、見つかるわけがない。
そう、思っていたけれども。
爽の顔は、尋常ではないくらい、蒼白になっていた。
「おまえ、大丈夫か?」
今にも爽が、消えてしまうのではないか…と、トモヒロは
心配になってくる。
目の前には、社へとつながる階段が、いつもより長く
立ちはだかっているようだ。
まるでここから先が、境界線の向こうに感じる。
はぁ~と爽は、大きく息を吸い込む。
「どうする?今ならまだ、間に合うぞ」
さり気なくオジサンは、引き返すよう試みる。
「いいえ、行きます」
キッパリとそう言い切ると、爽ははぁ~と大きく息を吐くと、
「よしっ」
パンパンと、頬を両手でたたく。
「行くのか?」
トモヒロは確かめる。
「もちろん、行くよ」
爽はグッと、目を階段の上に据える。
「おまえは…行かなくてもいいよ」
爽はトモヒロを振り返る。
「何言ってるんだよ。
もちろん行くに決まってるだろ」
そう返すと…爽を追い越して、トモヒロは階段を上って行く。
「おい、大丈夫か?」
オジサンは、二人に声をかける。
「もちろんだよ」
爽とトモヒロは、階段を上りながら、声を上げる。
「仕方がないなぁ」
おもむろに、オジサンはズボンで両手を拭くと
「よぉし」
そうつぶやくと、二人の後を追った。
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