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「オジサン!ボク…あの子に、『私を探して』と言われた

 んだけど…

 もしかしたら、『私のお面を探して』って言われたのかも

 しれない」

 急に、思いついたように、爽が話しかける。

「ホントに、そうなのか?」

だがトモヒロは、しかめっ面をする。

「何で、そうなるんだよ。

 あの子は、どこかに隠れているんだろ?

 あの子の弟を探そうとしているのも、結局はそれなんだろ?」

何か、違う…

いきなりトモヒロは、爽のポケットに入っていた写真を取り出す。


「あっ、おまえ!持って来ちゃったのか?」

 何だよ…

爽が呆れた顔をする。

「何言っているんだよ。お前が、持っていたんだろ?」

言い返すトモヒロに、爽は微妙な顔をする。

「そっちこそ、何を言っているんだよ!

 おまえのポケットに入っていたヤツだよ」

「えっ?」

「おまえが寝ていた時に、見つけたんだ」

 あらためてトモヒロは、爽に向かって、ぐぃっと写真を突き出す。

「え~っ、なんで?」

やはり爽自身には、心当たりがないようだ。

「何でって…それは、こっちのセリフだよ」

2人が言い合いをしているのを、オジサンは

「まぁまぁまぁ」ととりなすように声をかける。

「写真って、なんだ?」

ミラー越しに、後ろをのぞく。

「これだよ」

トモヒロはブスッとして、運転席にぐぃっと差し出した。

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