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「あれって…鬼?」
思わずトモヒロが、ポカンとする。
「ソウ…知ってたか?」
あらためて聞くと、爽は激しく頭を振る。
「そうか?この辺りの風習とかじゃあないのか」
トモヒロが、柱にかけられたお面を見上げていると…
「どうした?何かあったか?」
オジサンが、二人の背後に立った。
「あれ…」
まっすぐに、爽が柱を指差す。
「あれ、どうしたの?」
オジサンは、キュッと眉をしかめると、
「あれか?
あれは…じいさんの形見だ」
ボソッと言う。
「えっ?」
「どうして?」
二人はオジサンを見る。
「まぁ、あんまり…気持ちのいいもんじゃあないよなぁ」
二人の表情を見ると、真顔になる。
「じいさんは…なぜか、ここ最近…
やたらと、鬼のお面を集めていたんだ」
驚かせて、悪かったなぁ~と、二人に向かって言う。
「何でも、じいさん…夢に出て来たとかで」
おかしいだろ?
乾いた声で笑うと、オジサンはその黒ずんだお面を見つめる。
「ユメ?」
何だかそれって、自分と一緒だ…と爽は笑う。
「じいさんもちょっと…ネジが緩んできてたのかもなぁ」
ため息をつく。
「まぁ、今となっては、確かめようがないけどなぁ」
じぃっとお面を見上げる。
爽が持ってきたお面は…実用的というよりは、装飾的な雰囲気がある。
おそらくは、どこかに奉納されていたか、飾られていたものだろう。
だがじいちゃんのお面は、人の手あかで黒ずんで、てらてらと
黒光りするような…実際に、使われていたような雰囲気だ。
木の肌は黒ずんで、彫りもなめらかになり…
うがたれた二つの穴からは、じいちゃんのまなざしが、こちらを向いて
いるような錯覚を覚えた。
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