38

「これをよく…手元に置いていたんだ。

 昔、自分の犯した罪を忘れないように…という戒めなんだそうだ」

 淡々と言うオジサンの言葉は、残念ながら、爽にはまったく

心あたりのないものだった。

「じいちゃん…何を後悔していたんだろう?」

爽がボソリとつぶやくと、オジサンは爽の方を向く。

「それは、やっぱり…大事な孫に、危険な目にあわせたことだと

 思うぞ」

ボソリとそう言う。

(まただ、一体、何があったというんだ?)

爽は、焦りのようなものを感じる。


「そのお面…もっとよく見せてもらってもいいですか?」

 その場を取り繕うように、ごく自然に、トモヒロは手を伸ばす。

「これか?いいけど…」

何のためらいもなく、オジサンはトモヒロに手渡す。

「これは…何だか知らないが…いわくつきのお面だ」

その言葉に、トモヒロの手が、ピタリと止まる。

「いわくつき…?どんな?」

まさか、さわると呪われるのだろうか?

爽もトモヒロも、身がまえる。


 二人のおびえた顔に気が付くと、オジサンはハハハ…と笑い、

「まさか、そんな!

 物騒なものを、手元には置かないだろ?」

そういうものは、神社とか、お寺さんに預けるもんだろ、と

オジサンは2人に言い聞かせる。

「そう?」

ようやくトモヒロは手を伸ばし、そのお面をシゲシゲと見つめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る