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「おばあちゃん、おはよう」
トモヒロと2人、台所をのぞくと…
割烹着姿で、立ち働くおばあちゃんの姿が見えた。
「あっ、ソウ!おはよう」
おばあちゃんはにこやかに、爽の方を振り返る。
「今…お味噌汁を作っているの。
悪いけど、これを神棚に持って行って」
おばあちゃんから、白い器を手渡される。
爽はチラリとトモヒロを見ると、
「おはようございます」
爽の隣で、トモヒロがペコリと頭を下げる。
「あっ」
おばあちゃんは爽を見ると
「お友だち?」
うかがうようにして聞く。
トモヒロが「あっ」と声をもらすと、爽は手でそれを制して
「そうだよ。一緒に来たんだ」
にっこりと微笑む。
「友達のトモヒロだよ」
おばあちゃんに伝えた。
「そう、トモヒロくん。
ソウと仲良くしてあげてね」
昨日とまったく、同じ言葉が繰り返される。
(やっぱり、覚えていないのかぁ)
爽はちょっと、ガッカリするけれど
「村祭りが見たいんだって」
あらためて、そう告げる。
「あら、そう?」
珍しいわねぇ~
おばあちゃんは、にこにこしながら、二人を順繰りに見つめる。
「ゆっくりするといいわ」
そう言うと
「もう少しで、ご飯が炊けるわ。待っててね」
クルリと背を向けた。
「元気そうだね」
手渡された器を持って、座敷にある神棚に向かう。
「うん、今は機嫌がよさそうだ」
おそらく昨日の会話は、覚えていないのだろう…とひそかに思う。
「キツネの話は、聞けそうにないなぁ」
気になっていただけに、爽は少しガッカリする。
「そんなことはないよ。
まだ、チャンスはあるさ」
トモヒロは爽を慰める。
「おじいさんって…どんな人だったの?」
神棚の側に飾ってある写真を見て、トモヒロは尋ねる。
「この、写真の人?」
「そうだ」
「ソウは、おじいさんに似ているんだなぁ」
ポロリとそう言う。
「そうか?」
自慢のじいちゃんだ。
それを聞いて、爽は嬉しそうに頬をゆるませた。
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