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「ソウ…おまえ、どうした?うなされていたぞ」
ユサユサと肩を揺さぶられて、ハッと爽は目を開ける。
(ここは?)
目に飛び込んできたのは、見慣れた自宅の自分の部屋ではなく、
古いシミの浮き出た木目の天井だった。
「えっ?」
しかものぞき込んでいるのは、あの女の人ではなくて、トモヒロだ。
「なに?」
ボンヤリと、トモヒロを見上げる。
「なんだ、お前…寝ぼけているのか?」
トモヒロは、はははと笑う。
「寝ぼけた?なんで?」
ゆっくりと、目の前のトモヒロに焦点が合うと、
(あの人は、どこだ?)
爽はすぐに、身体を起こす。
「おい、どうした?
何を探しているんだ?」
落ち着きなく、キョロキョロとする爽に向かい、トモヒロは
話しかける。
「さっき、いたんだ」
仕方がなく、爽はトモヒロに打ち明ける。
「いたって、何が?」
ニヤニヤしながら、トモヒロは爽に問いかける。
「例の女の子が…」
正確に言うと、ちょっと違う。
キツネの女の子ではなくて、前よりも大きくなって、下手すると
自分よりも大人に成長していたけどな。
思い出しながらも、あれはやはり夢だったのだろうか…
と、爽はまだ迷っている。
「へぇ~例の女の子が?」
相変わらず、ニヤニヤ笑いを浮かべて、トモヒロは爽を見る。
「しるしを渡したって。
探しに来て、と言ってた」
そう言いながらも、きっとトモヒロは、信じてくれないだろうな…と、
爽はふと思う。
何しろまだ、頭がボーッとしている。
あの不思議な女の人は、何で自分に探せ、と言うのだろうか?
何で、トモヒロではなく、自分なのか、気になるのだが…
「女の子じゃなかったら、どんな人なんだ?」
寝ぐせをつけて、ボンヤリとする爽のことを、トモヒロは
まだ、本気にしてはいなかった。
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