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 ようやく帰ってきた…

爽は鬼のお面を、そっと机の上に置く。

一時、この家に暮らしたことがあったために、爽の部屋が

今でもここにあるのだ。


「見れば見るほど…迫力があるなぁ」

 トモヒロは、例のお面をじぃっと見詰める。

「夜に見ると、怖いかもなぁ」

今にも動き出しそうなくらい、大きな目がうがたれている。

 椅子に座ると…今の爽には、低すぎるくらいだ。

クルクルと回して、高さを調節する。

「ここ…お前の部屋なのか?」

トモヒロは珍しそうに、部屋をながめる。

 まるで時間が、子供の頃のまま、止まっているようだ。

「うわっ、懐かしい…ゲームボーイか?」

「うん、勉強するのを条件に、買ってもらったんだ」


 毎年、夏休みの宿題は、このじいちゃんの家でするのが、

ならわしだった。

「へぇ~いいなぁ~」

羨ましそうに、トモヒロはゲームのカセットを手に取る。

爽は、グルンとイスを回すと、

「え~そうかぁ?

 友達と遊びにも行けないし、旅行にも連れて行ってもらえない

 んだぞぉ」

そう言いながらも…ここでザリガニ釣りをしたり、メダカを探したり、

セミ取りをするのが、結構楽しかったことを思い出す。

「ボクのトコは、田舎がないから…

 毎回、つまんなかったぞぉ」

 別に、どこかに連れて行ってもらったわけじゃない。

 せいぜい、学校のプールだ…

トモヒロは、本棚に並べてあるマンガを眺める。

「そうかぁ?」

「そうだよ!」

 

 確かに、ここに来るのは嫌いじゃあなかった。

だけど…

「いつの間にか、来なくなったんだよなぁ」

その方が、つまらなかった。

「何か、あったのか?」

一冊、本棚から抜き出す。

トモヒロは早速、ベッドに座って開く。

「それが、よく、わからないんだ」

そう答えながら、爽自身も妙だ…と感じる。

「じゃあ、ここに来たのは、それ以来なの?」

マンガのページをめくりながら、トモヒロは爽に尋ねる。

「そうだな」

「その辺りに…何かあるのかもしれないな」

目は、ページに落としたまま、トモヒロは爽に向かって

話しかけた。


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