27

「じゃあ…キツネのお面の女の子って、知ってる?」

 つい爽は、言葉をもらす。

「えっ?」

一瞬オジサンの目が、キョロキョロと動く。

「ボク…キツネのお面の女の子に…会ったことがあるん

 じゃあないの?」

思わず、一番気になっていたことを、口走っていた。

「キツネのお面?」

 誰のことだ?

オジサンは、ポカンとした顔をする。

「そう、キツネのお面の女の子のことを、探しに来たんだ」

トモヒロが、ついでのように口を挟む。

「あっ」

「おい!」

 絶対に、夢の女の子を探している…なんて、オジサンは信じて

くれないだろう…と思っていた。

「キツネのお面って、どんなお面?」

 オジサンは、からかうことなく、真面目に爽に向かって聞く。

「どんなって?」

「プラスチックのお面?

 それとも木彫り?古いお面?」

「えっ?白くて、手書きのお面…だと思う」


 さすがに、爽には自信がない。

何しろ少し前に、見た夢だからだ。

印象的だった部分は、頭に焼き付いているのだが…

あの手紙の主と、同一人物だ、という保証はない。

(だけど、きっと…あの子だ)

なぜだか爽は、そう思っている。

直感としか、いいようがない。

(あの子がきっと…会いに来てくれ、と言っているんだ)

半ば、そう信じ込んでいるのだが…

さすがにそれは、トモヒロには言えない。

きっとバカにされる…と思うからだ。


「白くて、手書きのお面かぁ~」

 もしかして、和紙か?

オジサンは、しばらく考え込んでいるようだ。

そうだ…

爽は思い出す。

「お稲荷さんみたいに、怖い顔をしていなくて…

 とっても穏やかな顔をしてた…」

ポツンとそう言った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る