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「これ?」
ホッとしたものの、どこまで話したものか…
爽は迷う。
まさか夢の話とか、ラブレターの話など、話すのはちょっと
面映ゆい。
「そうだよ。
だって、爽が盗んだわけじゃあないんだろ?」
ニヤニヤしながら、オジサンが言う。
「うん、これは…何というか…誰かがボクの家のポストに、
入れたんだ」
とりあえず、例の女の子の話は後にしよう…
直感的にそう思う。
「へぇ~」
オジサンは笑うどころか、とても真面目に聞いている。
「で、このチラシが、一緒に入っていたんだ」
例のチラシを、リュックのポケットから取り出す。
「おや、確かにこれは、村祭りのチラシだなぁ」
どうやらオジサンは、信じてくれたようだ。
「でも…何で、ソウなんだ?」
オジサンも、爽と同じことが気になるようだ。
「それなんだ。
オジサン、何か知ってる?」
うかがうようにして、爽はオジサンに尋ねる。
オジサンは一瞬、フッと上の方を向くと
「それは…ソウが、選ばれたのかなぁ?」
意味深なことを口に出す。
「えっ?」
「選ばれた?」
爽とトモヒロは、思わず声を上げる。
それは、思いつかなかった。
二人は顔を見合わせ、互いの目を見つめ合う。
「でも…なんで?」
「さぁ?」
オジサンは、何となく言いにくそうに、複雑な顔をしている。
するとトモヒロが、何かを思いついたように
「あっ」と声を上げると
「さっき…ソウがキツネの子に、さらわれそうになった、と言って
ましたよね?」
おばあちゃんが言っていたことを、思い出す。
「あぁ~それかぁ」
困ったように、オジサンは頭をかく。
「あれは…何かと勘違いしたのだろう」
苦しい言い訳をしている。
勘違い?
何で、そんなことをするのだろう?
爽は、まだ何か自分の知らないことがあるのでは、と疑っていた。
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