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「母さんは…昔っから、この家のことを嫌っていた」

 ポツンと爽はつぶやく。

「えっ、なんで?」

田舎を知らないトモヒロには、よくわからない。

「さぁ~何かあるんだろ」

それにしても、自分の実家だというのに、あんなに嫌うって、

何があるのだろう?

ノリヒロオジサンは、何かを知っているようだ。

「まぁ~色々あるんだろ」

黙り込む爽を見ると、トモヒロはそれ以上、聞くのを止めた。


「それで…どうしようか?」

 とにかく、明日からどうするか…だ。

来たら、何とかなる…と甘く考えていた。

だが、今の段階では、どうにもなりそうにない。

「うん…そうだよなぁ」

何となく、自分たちの手には、負えない気がしてきた。

初っ端から、大きな壁にぶつかりそうな予感がする。

「情けないよなぁ」

「母さんに、大見得を切って来たのになぁ」

すでに弱音がこぼれ出る。

二人が顔を見合わせていると、

「悪かったなぁ。

 何の役にも立てなくて」

オジサンが、ひょこっと、二人の前に顔をのぞかせた。


「最近…まだらボケっていうの?

 あれがあるんだよねぇ」

 まいったなぁと言いつつ、オジサンの口調は意外にも明るい。

『あの子は、のん気だからねぇ』

母さんが言っていたことを思い出す。

「そうかぁ~」

 何だか、悪い所に来ちゃったのかなぁ~

何となく重たい空気が、その場に流れる。

するとオジサンが、にこやかに笑うと

「そうそう、そのお面、どうしたんだ?」

ようやく話を戻した。

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