24

 まるで嵐のようだ…

爽はボンヤリと、そう思う。

さっきのあれは、何だったのだろう…

まだ爽の頭の中では、処理出来ないでいる。

トモヒロは、聞いていいものかどうか、迷っているようだ。

遠慮がちに、爽のことを見ている。

「ソウ…おまえ…」

まさか、さらわれたのか、と言おうとして言えないでいる。

「まぁ、あれだな。

 おばあちゃんは、ちょっと…勘違いをしているんだろうなぁ」

苦しい言い訳を口にする。

だが本当のところは、爽に聞きたくてたまらないのだろう。


 もちろんそれは、爽は気付いていた。

じぃっとトモヒロを見ると…

「知らないよ」

唐突に、そう言う。

「知らないって、何を?」

声を裏返して、トモヒロが聞く。

「何をって…キツネ?」

平然として、爽は答える。

「キツネ…かぁ」

そうつぶやくと、トモヒロは再び黙り込む。

「あの時のこと…ボクは知らないんだ」

さらに爽は繰り返す。

「何にも。まったく、知らないんだ…」

 それって、ヘンだろ?

困った顔をして、爽はトモヒロを見る。

「うん、困ったもんだ」

トモヒロ自身も…どう返したらいいのか、わからない。


「ねぇ…あれって、本当なんだろうか?」

「何が?」

「キツネのこと…」

 二人はあえて、誘拐とは言わない。

なぜだか…口にしてはいけない気がするのだ。

「わからない」

さっきから爽は、自分がどうしたらいいのか、わからないのだ。

「おばあちゃんって…やっぱりボケちゃったんだろうか?」

爽には、どうしても信じられない。

「どうだろうなぁ」

もちろん、トモヒロにもわからない。

二人にとっては、重たすぎる真実なのだ。

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