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「疲れただろ?とにかく入って」

 オジサンが、爽の背中をポンと押す。

「ばあちゃんも、待っているぞ」

ニコニコしながら、そう言う。

「ソウ、とにかく、入ってから話そう」

トモヒロにも、うながされた。


 漆喰の壁の古い家だ。

「へぇ~」

トモヒロが珍しそうに、キョロキョロとする。

「大きいなぁ~」

大きな声を上げる。

「広いだけだよ。

 すき間風が入るし、蚊も入り放題。

 虫のパラダイスだ」

 いや、ねずみもかな。

ノリヒロオジサンは自分で言って、

「ひでぇなぁ~」と笑っている。

「そんなことはないです。とってもステキです」

トモヒロはあわてて、オジサンに言う。

ははは…

オジサンは、大口を開けて笑うと、

「キミは、優しい子だなぁ~

 気を遣ってくれているのか?ありがとう」

トモヒロに向かって、ペコリと頭を下げた。

「へっ?」

トモヒロは戸惑う。

大の大人に、頭を下げられるとは、思っていなかったのだ。

「そんな大そうなことは、ないですよぉ」

止めてくださいよぉ~

ヘラヘラと笑う。

「えっ、そうか?」

オジサンはすぐに、真顔になる。

「いいから早く、中に入ろうよぉ」

 今度は爽が、早く、早くとトモヒロの背中を押す。

「あ~はいはい」

最近の子供は、ずいぶんせっかちだなぁ~

オジサンは、扉に手をかけた。


「あ~っ、ビックリした!」

 まるで、クマの置き物のように、玄関を入ってすぐの所で、

おばあちゃんが待ちかまえていた。

オジサンいわく…

「スィッチの入っている時と、オフの時の差が大きいから、

 気にしないようにな」と。

 つまりは、今日はオンの日か?

オジサンが、おばあちゃんをなだめている。

その姿を見て…母さんが来たがらない理由が、わかるような

気がした。

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