17
「まぁ、仲良くしてやってくれ」
真っ白な歯を見せて、オジサンはトモヒロに向かって、
にぃっと笑う。
「はい!」
トモヒロはグッと、差し出されたオジサンの手をつかむ。
するとオジサンは、なぜか普通の握手ではなくて、指と指を
からませるようにして、ぐぃっと肘を曲げる。
「えっ」
戸惑うトモヒロに気が付くと、
「オジサン!トモヒロが驚いているよ」
爽がたしなめるようにして、注意をする。
「あっ、そうか、すまん…」
どうやらこれは、オジサンなりの親愛の情の証らしい。
「家までちょっと距離があるから、車で迎えに来たよ」
二人の荷物を両手にぶら下げると、ノシノシと駅の外に出る。
「この辺は、バスもタクシーもあまり来ないから、出かけたい時には、
声をかけてくれ」
前を向いたまま、オジサンは二人に話しかける。
「姉さんから聞いたよ!
この村のことを、知りたいんだってな」
オジサンの声が、やけによく響く。
他に人がいたら、丸聞こえだ。
だが、オジサンはまったく気にしていないようだ。
それに、人通りの少ない無人駅なので、改札を抜けたところで、すでに
ガランとしていて、何もないのだ。
「え~っ、駅員さんは?」
「いたりいなかったりだな」
「切符はどうするの?」
「券売機があるだろ」
「ICカードは使えるの?」
「なんだ?それ」
「じゃあ、売店は?」
「そんなものは、ない!」
「え~っ!」
すごっ!と、トモヒロは声をもらす。
都会っ子ではないものの、爽もトモヒロも、現代っ子だ。
特にトモヒロは、こういう駅は生まれて初めてだったのか、
しきりと「へぇ~」と驚いていた。
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