12

 母さんからは、条件つきで、ようやく許可が出た。

1,じいちゃんの家で、ばあちゃんの世話を手伝うこと。

2,オジサンの言うことを聞くこと。

2,勉強を朝晩、最低1時間ずつすること。

4,定時連絡を必ずすること。

「とにかく、オジサンから一つでもクレームが出たら、速攻帰って

 もらいますからね!」

険しい顔をして、そう告げられる。

え~っ、こんなに?と爽は不満に思うけれども、

「これでもまだ、甘いくらいよ」

すぐに言い返されたので、ここはおとなしく従うことにした。

(歯向かっても、ろくなことにはならないからな)

ひとまず、手を打つことにした。


「ところで、母さんはどうするの?」

 一応、確かめてみる。

何しろ、じいちゃんはいなくても、ばあちゃんはまだ、元気だからだ。

「私は…やめておくわ」

珍しく、母さんは引き下がる。

「え~っ、どうして?」

「どうしてでもよ!」

 どうもそこは、母さんにとっては、苦手な場所のようだ。

そういえば…爽が子供の頃も、送り迎えはするものの、母さん本人は

そそくさと逃げるようにして、帰ったものだ。

その時は、忙しいと言っていたけれど…

(もしかして、ばあちゃんとケンカでもしたのだろうか?)

本人に聞かなければ、わからないことだけれども。

もっとも、教えてはくれないだろうな、と爽は子供心に悟ったものだった。


「たぶん、お祭りも昔とは違うかもよ」

 案外ショボイかもよ~

母さんはまだ、グズグズと言っている。

「いいんだよ!オジサンにも、会いたいし」

言い訳ではなく、それも本音だった。

とにかく、行ってみなければ、はじまらない…

それが、噓偽りのない真実だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る