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(えっ?)

 絶対に、バカにされるだろう…と思っていたのに。

「ねぇ、ボク…あの時、お祭りに行ったんだよね?」

母親に、確認せずにはいられない。

思わず、食い入るように見る。

母親のちょっとデカ過ぎるくらいの目が合うと、

「なによ、気持ちが悪いわねぇ」

やっぱり、あんた、ヘンよと顔をしかめる。

「いや、なんでもない」

これ以上言うと、詮索されかねない。

あわてて爽は、黙り込む。

 ホッとした気持ちと、驚きとで、爽の頭の中は一杯になる。


(やっぱり、あれは…夢じゃなかったんだ)

 しみじみと、安堵のため息をもらす。

このお面を手に入れる前に、爽は奇妙な夢を見た。

それがあまりに、リアルだったので…

もしかしたら、過去にあった出来事なのか…と思っていたのだ。


「オジサンには、言っておくけど」

 そんな爽を、じぃっと見詰めると、母親は静かにそう告げる。

「でも、あんたたち!

 オジサンに、迷惑をかけないようにしてよ!

 遊びほうけるのなんて、もってのほか!

 ちゃんと勉強する、と約束しないと、行き方を教えないからね!」

ここぞとばかりに、母親にしっかりと釘を刺された。


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