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(もしかして、何かあったのだろうか?)

 爽はフッとそう思う。

「じゃあ…村の行き方、教えてくれない?」

思い切って、母さんに聞く。

「あら、覚えていないの?」

母さんは、意外な顔をする。

「そんな…大昔のこと、覚えているわけがないだろ」


 何しろ、ボンヤリとしか覚えてはいない。

あれは、幾つのことだっただろう?

そもそも爽は、このお面を拾うまでは…そのこともすっかり、

忘れていた。

ボーッとした爽の顔を見ると、

「ねぇ、あんた、大丈夫?」

母さんが少しだけ、心配そうな顔になる。

「そうかぁ~おじいちゃんが亡くなってから…あそこには

 行っていないもんねぇ」

そうして、しみじみとした声を出す。

「そうだったっけ?」

「そうよ。お葬式は、あんたも行ったでしょ?」

「あっ、そうかぁ」

そんなに昔のことでもないのに、なぜか爽は、何も覚えては

いない。

ただ…ボンヤリと覚えているのは…

爽は、思い切って口に出す。

「じゃあ…村祭りに、キツネのお面をかぶった女の子のこと、

 覚えてる?」

正確に言うと、それは最近見た夢だ。

「キツネ?」

案の定、母さんは頭をひねると、

「そんな子…いたっけ?」

 どこの子?

笑い飛ばすことなく、思い出そうとしているようだ。

「おじいちゃんと、お祭りに行った時のことよね?」

さらに確かめてくるので、爽は自信がないけれど

「そうだと思うけど?」

逆に、夢の話だと言えなくなってしまう。

だけど、収穫はあった。

(やっぱり…行ったんだ…)

爽の頭の中は、まだモヤに包まれていた。

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