10
(もしかして、何かあったのだろうか?)
爽はフッとそう思う。
「じゃあ…村の行き方、教えてくれない?」
思い切って、母さんに聞く。
「あら、覚えていないの?」
母さんは、意外な顔をする。
「そんな…大昔のこと、覚えているわけがないだろ」
何しろ、ボンヤリとしか覚えてはいない。
あれは、幾つのことだっただろう?
そもそも爽は、このお面を拾うまでは…そのこともすっかり、
忘れていた。
ボーッとした爽の顔を見ると、
「ねぇ、あんた、大丈夫?」
母さんが少しだけ、心配そうな顔になる。
「そうかぁ~おじいちゃんが亡くなってから…あそこには
行っていないもんねぇ」
そうして、しみじみとした声を出す。
「そうだったっけ?」
「そうよ。お葬式は、あんたも行ったでしょ?」
「あっ、そうかぁ」
そんなに昔のことでもないのに、なぜか爽は、何も覚えては
いない。
ただ…ボンヤリと覚えているのは…
爽は、思い切って口に出す。
「じゃあ…村祭りに、キツネのお面をかぶった女の子のこと、
覚えてる?」
正確に言うと、それは最近見た夢だ。
「キツネ?」
案の定、母さんは頭をひねると、
「そんな子…いたっけ?」
どこの子?
笑い飛ばすことなく、思い出そうとしているようだ。
「おじいちゃんと、お祭りに行った時のことよね?」
さらに確かめてくるので、爽は自信がないけれど
「そうだと思うけど?」
逆に、夢の話だと言えなくなってしまう。
だけど、収穫はあった。
(やっぱり…行ったんだ…)
爽の頭の中は、まだモヤに包まれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます