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「大体なんで、これがうちにあるのよ」

 母さんは、信じられないものを見た、と言わんばかりに爽を

にらみつける。

「ねぇ~とにかく、これ…返しに行きたいんだけど…

 どこに行ったらいいの?」

おそらく母さんは、何かを知っているに違いない…

そう、爽は踏んでいる。

「とにかくこれは、神社で保管されているはずよ」

何だって、あんたが持っているのよ!

 まるで災い事を運んできたような目付きを、爽に向ける。

「何を言っているんだよ!

 被害者はこっちだよ!

 勝手に、うちの前に置かれたんだ」

息子のことが、信じられないのか?

爽はムッとした顔になる。

だが母さんは、そんなことなど、毛ほども思わない。

「このお面は…持ち主を選ぶ、という言い伝えがあるのよ」

意味深なことを、口に出す。


「えっ?何だよ、それ!」

 驚かせないでくれよなぁ~と、爽は顔をしかめる。

「あら、怖いの?」

母さんは少しだけ楽しそうに、自分よりもデカイ息子のことを笑う。

何を、他人事みたいに!

爽は、お面を母親に突きつけると、

「とにかく、このお面!

 トモヒロと返しに行くよ。

 で、どこに持って行けばいいんだよ」

真面目に答えてくれよ。

爽はブスッとして、母親を見る。

「さぁ?」

あれほど騒いだくせに、母親の返事は素っ気ない。

「私も、よく知らない。

 たぶん、神社に行けばいいんだろうけど…

 この神社、今でも人がいるのかしらねぇ」

やはり、気味悪そうに、お面を見つめた。

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