5
「何で切るんだよ」
電話を切る爽を見て、トモヒロは不満そうに声を上げる。
「だって…あんまり言うと、怪しまれるだろ」
それもそうかぁ~
二人はうーんと考え込む。
「結局、ふりだしに戻る、かぁ~」
爽はポツリとつぶやく。
「こうなったら、その村に乗り込もう」
トモヒロが、グッと握りこぶしを作って、そう言う。
「知っている人を、片っ端から探すんだ。
一人くらいは、いるだろ」
珍しく、トモヒロがやる気になったようだ。
だが爽は何となく…イヤな予感がしてきた。
「さっきは、なに?
あんたたち、何をするつもり?」
トモヒロと別れて、早速爽は、じいちゃんのアルバムを探す。
押し入れに頭を突っ込んでいると、いきなり母さんが部屋に
入って来た。
「いきなり、なんだよぉ」
頭をゴンとぶつけて、爽はあわててブスッとした声を出す。
「入る時は、声をかけろよ」
決まり悪さをごまかすように、フンとソッポを向く。
何だかやましいことを、しているような…落ち着かない気持ちだ。
「あんた、さっきの電話は何よ」
やはり、来た!と思うけれども。
思いっ切り、しかめっ面をしてみせる。
「別に!トモヒロと休みの計画を立てていただけだよ」
「休みの計画と、じいちゃんの村と、何の関係があるのよ」
母親は、おそろしく勘がいいのだ。
絶対に、こう来る…と、爽には分かっていた。
だがトモヒロには
『親には言うなよ』
しつこいほどに、念を押されていたので…
話すわけにはいかない。
「いや、トモヒロが興味あるみたいなんだ」
苦しい言い訳だ。
母親は、「ホント?」
爽の顏をのぞき込んだ。
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