お前、ボクのことを、信用していないのか?

憮然とした表情で、トモヒロは爽を責めるように見る。

「ごめん…だって、あんまり記憶がないんだ。

 ボンヤリとして、曖昧で…

 まるで夢を見ているみたいで…」

なぜだか爽は、うまく説明が出来ない。

(トモヒロは、信じてくれないだろうなぁ)

爽は困ったように、トモヒロを見つめる。


「あ~あ、仕方がないなぁ」

 先ほどまで、にらみつけていたトモヒロも、じぃっと爽を見返す。

「なんだ?夢でも見たんじゃあないのか?」

あからさまに、ガッカリした顔をするけれど、

「ま、仕方がないかぁ」

あっさりと引き下がる。

「まぁなぁ~あんな思わせぶりなものを、もらったら…

 夢にまで出て来ても、おかしくはないよなぁ」

ボヤくように言う。

爽はキッと、トモヒロを見返すと

「それは違う」

大きな声で否定する。

「なんだよ、いきなり」

 行ったのか?

 行っていないのか?

 結局は、どっちなんだ?

そう言うと…爽はあきらめたように、ため息をつく。

「信じてはくれないと思うけど、昔、祭りに行ったことはあるんだ」

やや自信なさそうに、そう言う。

「なんだぁ~やっぱり、行ったんじゃないかぁ」

ホント、思わせぶりだなぁ~

バンバンと、爽の背中をたたく。

 だが、爽の顏は何だか浮かない。

「じゃあ、そこで…誰かに会ったんだろ?」

それならば、話が早い。

楽勝じゃないか!

トモヒロは、ヘラヘラしながら、爽の背中をさらに、バンバン叩くが…

「いや、実は、そうでもないんだ…」

爽はうつむいたまま、トモヒロの期待通りの反応はしなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る