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「頼まれたの」

 ポツンと女の子は、ひとり言のようにつぶやく。

「頼まれた?」

「だれに?」

爽とトモヒロが、同時に聞く。

さらに女の子はビクンとして、泣きそうな顔になる。

「大丈夫だよ。

 お兄さんたちは、何にも怒っていないからねぇ」

トモヒロは身体をかがめて、女の子の顔をのぞき込む。

「お名前は?」

「かえで」

「そう…可愛いお名前だね」

ニッコリと微笑む。

その様を見ると、爽はひそかに(大したもんだ)と舌を巻く。

「ねぇ、その人は、どんな人だった?」

そのまま、爽が尋ねようとすると、トモヒロはかぶせる

ようにして、

「女の人?」

ポンと聞く。

女の子は、爽とトモヒロを順繰りに見ると

「うん」とうなづく。

「女の人なんだぁ」

爽がつぶやくと、女の子は一瞬、なに?という顔になり、この

見知らぬお兄さんをじぃっと見ている。

「赤い風船、お姉さんに、もらったんだよね?」

さらに聞くと、

「うん」

女の子は叱られやしないか、と上目遣いで見上げる。

「大丈夫だよ。

 ねぇ、その時、何か話をした?」

ニコニコしながらも、トモヒロがさり気なく聞く。

「なにか?」

女の子は頭をかしげて、思い出そうとする。

やっぱり女の子は(こんな小さな子も)トモヒロがいいのかなぁ~

と、爽はまったく違うことを、考えていた。

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