10
「このお兄さんが、聞きたいことがあるんだって」
あろうことか、トモヒロがそう切り出す。
(まぁ、そうなんだけど~
少しは、協力してくれても、いいのになぁ)
何と切り出したらいいのかわからず、爽は思わず、トモヒロを見る。
そんな爽の心の内も気付かず、その女の子は、まっさらな瞳を爽に
向ける。
(ほら、聞けよ)
さらにトモヒロは、目で合図をする。
(わかってるよぉ)
何だかどうも…トモヒロのペースに、巻き込まれているような気が
するが、元々は、自分のことなのだ。
爽はグッと、深呼吸をすると、
「ねぇ、さっき、この家の前にいたよね?」
まずは、遠回しに探りを入れる。
女の子はキョトンとしているけれど、コクンとうなづく。
「じゃあねぇ、この包みのこと…
何か知ってる?」
ニコニコしながら、先ほど回収した物を、トモヒロは女の子の前に
突き出す。
「えっ」
女の子は、怒られる…と思ったのか、顏をこわばらせて、ギュッと
唇を固く結ぶ。
「あっ、別に…怒っているわけじゃあないんだよ。
そうじゃなくて…
これって、誰がポストに入れたのか、知ってる?」
ドキドキしながら、爽は尋ねる。
女の子は深くうなだれると、ギュッと風船のヒモを握り締める。
まさか、ここで泣き出すのではないか…
爽は思わず、息を飲んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます