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「おっ、なんだ?」
早速トモヒロは、見せろとばかりに、爽の手元をのぞき込む。
「名前は…ないなぁ」
「うん」
「やっぱり…直接だな」
「そうだな」
まさか、イタズラか?
一瞬、頭にひらめいた時…
「おい、誰かいないか?」
トモヒロの声に、爽は我に返る。
お隣さんは、留守のようだ。
道路には、自転車が一台…
(トモヒロのだな)
犬のお散歩をする人が、一人…
「あの」
思い切って、爽はその人に声をかける。
「はい」
変なヤツ、と思われたら、どうしよう?
爽は、慎重に近付く。
「あの、ここで…誰か、見掛けませんでしたか?」
内心、心臓が飛び出しそうなくらいに、ドキドキして、
その人に話しかける。
その女の人は、じぃっと爽を見つめると
「誰かって?」
爽の言っている意味が、わからない…という顔をして、
ピタッと足を止める。
あらためて、その人を見ると…
この辺りでは、見掛けない顔だ。
(この近所の人では、ないようだなぁ)
その人は、30代くらいの人だろうか?
(もっとも、女の人の歳なんて、よくわからないけどな)
爽はニコニコしながら、遠慮がちに、
「可愛い犬ですね」
思い切って声をかけると、ようやく警戒をといたようだ。
「そうねぇ~あなたたちと…」
なぜ、という顔をしながらも、おとなしく女性を見上げる犬を
見つめる。
「それから、あの子ね」
前方を歩く、赤い風船を持つ女の子を、ツッと指さす。
「あの子?」
目の前には、4~5歳くらいの女の子がいる。
お母さんらしき人はなく、トコトコと一人で歩いている。
まさか、あの女の子が?
とても手紙の主とは、思えない。
だがその女の人は、
「そうよ」とうなづく。
「あの」
だが爽は、次の言葉を待っている。
「もう、行ってもいい?」
さすがに、おかしいと気づいて、その人が眉をひそめたので、
爽はあわてて
「あっ、はい。ありがとうございます」
ペコリと頭を下げると、その人はすぐに、逃げるようにして、
その場を立ち去った。
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