5

「ソウ…おまえ、何かあったのか?」

 隣の席の田中君に、声をかけられる。

「えっ?なにも」

「最近、いいことがあったんじゃあないのか?

 やけに、ソワソワしてるけど…」

ニヤニヤしながら、爽を突っつく。

「何もないよ、気のせいだろ」

そう返したけれど、内心ヒヤヒヤしていた。

ごく普通にしているつもりでも、やっぱり違って見えるのだろうか?

チラリとトモヒロを見ると、眉間にシワを寄せて、無言でうなづく。

(やっぱり、浮ついているのだろうか?)

急に自信がなくなる。

気を付けよう、と心に刻む。

 それでもトモヒロも、やはり落ち着かないのか、最近は爽を見張る

ように、徘徊している。

「おい!ドーベルマンじゃないんだから、そんなにウロウロするなよ!

 警戒されるだろ」

そうしたら…手紙の手がかりがなくなってしまう…

爽はひそかに、それを心配していた。


 もしかして、自分たちの様子に気が付いて、相手があきらめたのでは

ないか…と思っていた頃、ようやく変化が訪れた。

「あっ、何か入ってる!」

いつものように、帰宅するといの一番に、ポストをチェックすると…

何かが、指先に当たる感触がした。

「おっ、なんだ?ついに、きたか?」

トモヒロは飛び付くようにして、爽を押しのけると、ポストの中を

のぞき込む。

「おい、待てってば!」

バタンとふたを開けて、中を確認すると…

数枚のチラシの間から、大ぶりの封筒が混ざっているのが目に入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る