「おっとぉ」

 トモヒロは、足を踏ん張ると、

「他人事だよ!

 だって、こんなこと…中々お目にかかれないしな!」

そう言って、ニヤッと笑う。

「ま、イタズラでないことを、願うけどな」

だが、そうひと言、付け加える。

「なぁ~何とか、出来ないか?」

おまえのその頭脳を使ってさぁ。

爽はあくまでも真剣な目で、トモヒロに向き直る。

だがトモヒロは、まったく動じる様子もなく、

「ま、それは無理だな」

あっさりと、そう言い切る。


「無理?」

 なんだよ、それ…

 ただ聞いて、楽しんでいただけか?

「だって、そうだろ?

 今の時点では、あまりにも手札が少なすぎる」

トモヒロは、軽くあしらうように笑う。

「まぁ、焦らずに、相手の出方を待つんだ」

まるで聞き分けのない子に、言い聞かせるように、爽の顔を

のぞき込む。

「待つのも、大切な作戦の一つだ」

下手に動くと、かえって警戒されるだろ?

トモヒロは腕組みをすると、どっしりとかまえる。

「なんだよ、それ」

そうは言うものの、そうするしかない、と爽にもわかっていた。


 だが、機会は意外と早く、訪れることになる。

言われた通り、いつもと変わらない日々を過ごし、ただ窓から

外を見たり、ポストを見張るだけの日々が続いた。

もしかしたら、そろそろ誰か、接触してくるかもしれない…

その可能性を踏まえて、学校へ行く途中、コンビニによる時や、

はたまた、学校のトイレに行く時までも…

始終気を張る日々が続いた。

そろそろシビレを切らしそうに、なってきたけれども。

それでも爽は、忍耐の日々を送っていた。


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