第1章 まだ見ぬキミ…
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(コイツは、本気なのだろうか?)
トモヒロは、無言で自転車を押して歩いている、親友の横顔を
見ている。
「なんとなーく、わかったけど…
いや、まだ理解できないけど…
どうやって、見つけるつもりなんだ?」
なるべく爽を傷つけないようにと、考え考え言葉を継ぐ。
だが爽は「うーん」とうなったまま、特に何も思いつかないようだ。
差し出された封筒には、表も裏にも、何も記されてはいない。
おそらく直接、ポストに入れたのか?
「名前も、何もないし…
いたずらなんじゃあないのか?」
爽には、悪いけどな…と、またチラッと隣に目を向ける。
「うん、まぁ、そうだな」
さっきまで、あれほど雄弁に語ったくせに、今度はだんまりかぁ~
トモヒロは、爽の扱いに困り、頭をかく。
爽は、どちらかというと…無口でおとなしいタイプだ。
もちろん、友達もそう多くはないはず。
(まして、女の子にモテるなんて、聞いたことがないぞ)
嫌われるタイプではないが、まるで存在感のないタイプだ。
(まつ、ボクとも、ドッコイドッコイだけどな)
類は友を呼ぶ…という典型例だ。
特にスポーツに燃えるタイプでもなく、さりとて優等生でもない。
どこにでもいる、平々凡々なタイプか…
たまたま側にいて、鬱陶しくないから、一緒にいる…というところか。
(可もなく不可もない…というヤツだな)
別に今までは、それでも問題はなかった。
「あっ、誤解しないでくれよ!
それが本当なら、もちろん応援するよ」
何てったって、友達だからな!
本当ならな…
爽はギュッと、封筒を握り締めた後、大切そうに撫でて、再びポケットに
しまった。
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