プロローグ 後編

「あ~あ、お前って、ホント、乙女だよなぁ」

 もしかして、おとめ座なのか?

トモヒロは、はははと笑う。

「夢なんじゃないのか?

 どこの誰かも、わかんないんだろ?」

いちいちアイツの言うことが、ボクの耳に突き刺さる。

「そうだよ!

 だから、何なんだよぉ!」


 親友だからと、打ち明けるんじゃあなかった。

爽は、何度目かの後悔をする。

「まぁ、好きにすればいいけどさ!

 どこの誰かも、わかんないんだろ?

 なんでその子が…お前のことを待っている、と思うんだ?」

いい加減、目を覚ませよ!

さらにトモヒロが、重ねて言う。

 冷静に考えれば、もっともなことなんだ。

何しろ…たった一度だけ、会った女の子なんだ。

彼女だって、自分のことを忘れてしまっているはずなのだ。

「だけど、お前はまだ…信じているんだろ?」

 まるで爽の心を読み取るように、トモヒロはじぃっと、爽の

ことを見る。


 あまり元気がないのを気遣って、トモヒロは爽を呼び出した。

「どうした?おまえ、普通じゃないの、わかっているか?」

 爽はあの頃、同じ夢を見ていた。

それは、いつもきまって、小学6年生の頃のことだ。

神社のお祭りに行った帰り道のことを、何度も何度も夢に見る。

初めは…気のせいかと思ったのだが、あまりにも続くので、

これはおかしい…と気にはなっていたのだが…


「おまえ、何かしたのか?」

 元気のない爽に向かって、トモヒロは尋ねる。

アイツはあぁ見えて、友達思いのいいヤツなのだ。

「いや、何も…」

話をそらそうとすると、

「ホントかぁ?」

さらにトモヒロは、爽のことを見る。


 だが、トモヒロは知らない。

今、爽のポケットには、一通の手紙が入っているのを。

それは、昨日の夕方、ポストで見つけたのだ。

薄ピンクの封筒で、一瞬

「おっ」と思う。

ドキドキしながら、そぅっとのぞいたら、薄ピンクの便せんに、

たったひと言文字があった。

それは…紺色のインクで、真ん中に

「わたしをさがして…」とあった。

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