キミをさがして…

daisysacky

プロローグ 前編

「お~い、ソウちゃん!寝てるのかぁ~?」

 信号待ちで、ボーッと空を見上げていると、親友のトモヒロが

笑いながら、背中をどついてきた。

「おい、危ないだろぉ?」

危うく、自転車から落っこちそうになる。

その実、爽は少しも、怒ってはいない。


 いいんだ、今は…と思う。

夕間暮れ、昼と夜の境い目のこの時間…

自分の探し人は、今頃きっと、どこかにいる…と信じているのだ。

「お前…まさか、まだ探しているのか?」

 どこのどいつか、わかんないヤツだろ?

呆れた口調で、トモヒロはそう言う。


 それはまぁ、そうだろう。

だって、現実に存在するのかどうかも、定かではない人だ。

あんまりアイツがしつこいので、つい先日、口をすべらせてしまった。

自分には、忘れられない人がいる…と。

 初めは、

「おい、ウソだろ?」

いつの間に?と、大げさにトモヒロが騒いでいたけれど。

話しているうちに、

「なぁ~んだ」となり、

「おまえ、それって、夢でも見ているんだろ?」と爽をからかう。

「夢見がちのソウくんかぁ」

ケラケラと笑うので、

「いや、違うんだ。

 会ったことは…ある」

キッパリと、そう言い切ったものの…

「そうか、それは、いつ?」

すぐさま、トモヒロが食いつく。

「子供の頃だ」

爽の返事に、トモヒロは外国人のように、天をあおぐ仕草をすると、

「おまえ~気は確かか?マジか?」

大きな声で言う。

「マジだ。大マジだ」

負けるものか、と言い返すと、トモヒロは呆れるほどじぃっと

爽の目を見た後、爽が本気である、と悟る。

「幾らなんでも、それは無理だろ。

 どこの誰だか、わからないのに…

 どうやって、捜すつもりだ?」

哀れむように、そう言う。

「それって、あれだろ?

 昔一度だけ、会った女の子なんだろ?」

 今どき信じられない、天然記念物のようなヤツだ。

聞かずとも、そう思っているのは、当の本人である爽にはすぐにわかる。

ただ「あぁ」と、言葉少なに、うなづいた。

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