第19話 そんなことってあります?

 昼休み。

 俺の高校生活の休息がどんどん少なくなっている。。


「ここに、我々に対峙せんとするものがいらっしゃると聞いたのですけど!? どこのどいつですの!?」


 よくわからない日本語が教室内に響き渡ったが俺は昼寝を継続した。

 最近、疲れることが多いので、飯のあとは寝る。

 白銀にも「昼には来るな。疲れるだけだ」と釘をさしといたので。


「~~~~~~~~」


 まどろみの中、周囲の声が、意味を持たなくなる。

 なんか色々と話している奴らがいるが、俺には関係のないことだ。


「――この冴えない男が、お兄様の敵だっていうんですの!?」

「……は?」


 とはいえ、頭のうえから言葉が降ってくれば、俺でも顔をあげる。


 なんというか……形容しがたい女子生徒が居た。

 漫画みたいな縦ロールというか、漫画の縦ロールを現実的に表現したらこうなるんだろうな……という感じの髪型の女だ。悪い言い方をすれば、夜の世界の蝶が好むような派手な髪型。

 それも金髪。地毛……か?

 勝気そうな顔。

 金持ちのお嬢様みたいな雰囲気……。


 ……なんか嫌な予感がする。


「わたくし、金城アゲハですわっ。お兄様のボディガードをコテンパンにしたのって、あなたかしら?」

「……いえ、人違いです」

「あら、そうですの?」


 俺の言葉にすんなりと従い、アゲハとやらは去った。


 ……一分後。


「うそつき! うそつき! やっぱりあなたが霜崎とやらじゃないのっ」


 戻ってきた。

 俺は、あからさまにため息をつく。

 だって、金城って……この前の男だろ。

 白銀の許婚の。

 つまりこいつは、その金城の妹ってことか。


 まさか、親族が同じ高校に居たとはな……。

 白銀め……。

 すんなりと昼飯にこなくなったのは、こういう展開を予想してやがったな。


「……いや、さっきは『あなたは霜崎?』って聞かれなかったんで」

「あら、そうだったかしら。なら仕方ないわね」


 納得するんかい。

 よくわからないが、心が広い。


「じゃ、そういうことで……」


 俺は昼寝をするために、机につっぷした――。


「――それはダメですわ」


 机が引っこ抜かれた。

 顔から床にダイブ。


「永遠に眠らせる気か!?」


 床の下、コンクリだぞ!


「あなた、本当に強いの?」

「……しらん」

「でもボディガードを倒したでしょう?」

「さてね。どいつのことやら」


 まあ、あの筋肉野郎たちだろうけど。


「トーマスとゴードンとパーシーのことよ」

「あいつらそんなに機関車っぽい名前なの!?」

「ほら、心当たりあるじゃないの」

「っく……」

「ちなみに名前もブラフよ。つまりあなたは騙されたってわけ。強くても、脳みそは小さいみたいね」

「こいつ……」

「彼らの本当の名前は、サム、トム、ジムよ」

「ややこしいわ……」


 機関車のほうがわかりやすいわ……。


「ねえ、霜崎くん? もしあなたが本当に強いのなら、わたくしのこと、助けてくれると嬉しいのだけれど、いかがかしら……?」


 ……なんで俺の周りにはこういう奴らしかいねえんだよ。

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